ドル高による金価格低下は、インドと中国の金需要増加に繋がった。産金コストの目安となる1200ドルを割り込んだ水準だと中国やインドの買いが入りやすい情勢。
2010年からの金価格推移。2013年以降は1200ドルが支持線。米国の資産買入れ(QE3)終了により1200ドルを割り込んだが盛り返しつつある。
香港政府の統計は中国は3か月連続で金需要増加
香港政府統計処が11月26日に公表したニュースによると2014年10月に香港から中国大陸に輸出された黄金量が13%増加した。上昇は3カ月連続で、この7カ月で最高値となった。ニュースソースは匯通網(編集翻訳は浦上早苗氏)。
10月の香港の対中黄金輸出量は11万1409キロ。中国からの輸入を差し引くと合計7万7628キロが中国に流入。
2014年の金需要は千トン超えを予測
中国の産金最大手、中国黄金集団は11月4日、2014年の金消費量が1000トンを超えるとの見通しを示した。ただし、中国の消費拡大傾向は持続せず、来年以降はこの水準を下回る可能性があると予想。
中国黄金集団の幹部DuHaiqing氏は、今年の金需要増加について、金価格急落がもたらしたと指摘。
「消費は段階的に落ち着いていく。1000トンを超える水準は続かず、通常の水準に戻る見込みだ」と述べた。
中国の金需要は2012年以降の金相場下落により今年上半期に50%超増加し香港からの輸入が急増。今年の金の国内生産量は前年比約7%増の430トンと、過去最高を更新するとDuHaiqing氏は予測している。
インドの金需要は光のフェスティバルで増加
伝統的に金選好が強いインドは、金価格の下落で需要が増加し、またもやインド政府が金輸入規制を検討。
金消費国世界一の座はインドと中国が争っている。
インドの2014年10月金輸入は106トンと過去17カ月で最高水準まで増加。ヒンドゥー教の新年のお祝い「光のフェスティバル」向けの購入が増加。
インドの三大祭り「ディーワーリー」
10月末から11月初めに小さな土器のランプ・ろうそく・照明・花火などのありあらゆる光が、美と豊穣と幸運を司る女神・ラクシュミーに捧げられるそうです。DONJAPAN
ムンバイのビジネススタンダードによると2013年5月以来の高水準で、2014年1月~9月の月額平均金輸入量の二倍(豪マッコーリー銀行)。
経常赤字悪化に悩むインド政府は、金輸入規制によって赤字削減を目指して関税率を次々に引き上げ。しかし、インド人民党のナレンドラ・モディ氏率いる新政府はモディノミクスと呼ばれる脱インフレや経済成長を目指し様々な規制緩和策を打ち出している。
ウォールストリートジャーナルやロイター通信によると、インド政府の新たな金輸入規制は、近日中に導入される可能性が高いとのこと。=導入されると金価格は下落可能性
しかし、原油価格の下落で経常収支の赤字改善、光のフェスティバルという季節要因による一時的な金需要増加といった要因からインドの経常赤字は改善されるとの予想も強い。
シティコープのアナリストは2014年~2015年のインド経常赤字を1.8%と予想。昨年の4.8%から引き下げ。
●インドの経常収支推移:最悪期は脱したもののまだまだ数字は悪い。
出典:世界経済のネタ帳
●インド経常収支の赤字額
- 2012年:-88.16
- 2013年:-32.40
- 2014年:-42.55
単位:10億USドル