豊富な資金を持つイスラム国の収入源と年間予算

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現在、世界最大の地政学リスクとなっているイスラム国。欧米はテロの脅威にさらされており、脅威が高じる程、イスラム系住民に対する警戒や差別を深めてテロの温床になるジレンマ。パリの同時多発テロ等でも、難民ではなく欧州国籍の人物が起こした事件であり根深いリスクとなっている。イスラム国への空爆の効果は薄く、兵糧攻めをしようにも援助を与える裕福な個人や組織も存在し、効果が上がらない。現在では、石油や遺跡・戦利品売却で自活の道さえ持っている。

イスラム国の存在は、金価格や石油価格の動向に大きな影響を与えています。ただし、シェール革命効果・イスラム国の石油ダンピング販売で、石油価格は1バレル50ドルを割り込む水準に下落し、彼らの石油販売収入は下落傾向にあるはず。

英紙フィナンシャル・タイムズが明らかにした記事では、イスラム国は、の空爆開始後も、シリアやイラクの支配地域の石油生産で年間5億ドル(約590億円)の収入があるとの調査結果を2015年10月15日に報じています。

ISILの勢力圏

ISIL:wiki:グレーがISIL(イスラム国の勢力範囲)


イスラム国の収入源

データの多くは、フランス人の国際コンサルタント「サミュエル・ローラン氏」の著作「イスラム国」謎の組織構造に迫るを参考にさせていただきました。

2014年6月にアブー・アブドゥッラフマーン・アル・ビラーゥイーの家から押収された資料によるとイスラム国の総資産は20億ドル超(現金・軍備・兵器などを含む)

1.戦争での略奪収入

  • モスルを占領して5億ドル以上のゴールドおよび外貨を入手。イラク北部にあるイラク第二の都市。古代ニネヴェ遺跡と世界有数の石油生産で知られる大都市。
  • 2013年にラッカで略奪した金額は約2億ドル。シリア北部の交通の要衝で、イスラム国はこのラッカを首都と宣言している。
  • 戦闘で獲得した戦利品の売却を行い、戦費を稼ぐ。兵器・女性・奴隷など値札が付くものは全て売却。

主な売却先は、トルコ国境で、イスタンブールやアンカラの売春宿や奴隷市場に連れて行かれる。2014年10月の国連報告書では、ラッカとモスルの市場で奴隷として売られていることが調査されている。

2.石油生産収入

  • シリア北東部で1日6万バレルの石油を生産、1日およそ300万ドルの収入
  • イラクの油田で1日8万バレルの潜在生産量

石油の販売は、闇市場となるため市価の半額が目安となり、25~35ドル。最近の石油価格下落で更に安い可能性も。石油生産と販売が最大の収入源となっている。

3.古代文明の出土品(アンティーク)

パルミラ神殿の破壊などが話題に上りますが、遺跡から出土した品々。特にキリスト教遺跡や品を販売して利益を得ている。売却ルートにはロシアマフィアが関わっている模様。

歴史的遺物の売却でも数十億円の収入を得ている。

4.外国からの援助・寄付

カタールからアル・バグダディの自爆テロ部門に200万ドル送金の事実((2014年9月)。カタールやクウェートなど湾岸産油国からの資金提供ありの噂。

イスラム国は、トルコ・湾岸産油国から様々な支援を得ている。そのため、特にトルコは名指しで非難されることも。

イスラム国の年間予算

予算に関して不透明な点がほとんど。サミュエル・ローラン氏の調査結果によると以下の通り。上記の収入源から支払を行う、軍事費の割合が多数。

  • 戦争省:年間3億から4億ドル
  • 法務省:1000万~1500万ドル
  • 財務省:2000万~3000万ドル
  • サイバー攻撃部門:5000~8000万ドル

両替手数料が財政を圧迫

イスラム国は、固有の通貨を持たず、手に入れた外貨を両替しなければいけない。支払の基本は米ドルとなるため両替手数料が高くつく。

シリア政府は、石油をイスラム国から買い、財政にダメージを与えるためシリアポンドで支払う。イスラム国は、様々な支払を米ドルで行うため、シリアポンドを両替しなければいけない

イスラム国のカリフ:アブー・バクル・アル・バグダディ

イラクの都市サマラの裕福な家庭出身。2004年2月、アル・バグダディは逮捕されて、5年間収監されていたが、なぜか釈放される。

サラフィー主義、シャリーアの実践を行うことがイスラム国の使命とされており、ジハードを実際に展開中。

アメリカのアルカイダ壊滅戦略(アルカイダ幹部アブー・マリアの言)

アメリカの戦略は、イラクの過激派組織を強化してアルカイダを弱体化させて壊滅に追い込む。あまりに野蛮でセクト的なイスラム国は長期的にイスラム社会の支持を得られず、最終的に消滅するだろう。その過程でアルカイダは打ち砕かれるだろう。

アメリカの目的は、目覚めかけているイスラム教徒の力を結集させずに、戦争の後、イスラム教徒が再び、欧米におとなしく従うようになること。アルカイダが滅んだあとに、イスラム国とアル・バグダディを本格的に攻撃するだろう。空爆ではイスラム国を滅ぼせない。

アルカイダの上級幹部、アブー・ムスタファの説によると、アル・バグダディは看板でしかない。と多くからカリフと支配機構を操る陰の存在がいる。自由シリア軍などシリアの軍事組織に欧米を援助をすると、その最新鋭武器は目先のお金欲しさにイスラム国に売却されている。

金相場の行方に、大きな影響を与える可能性を持つイスラム国。現在のところ、テロや中東による戦争拡大が大きく金価格の上昇に繋がっていません。しかし、潜在的な地政学リスクとしては、とても大きい要素。現在は、米FRBが開始するであろう2015年12月以降の米国利上げの方が金相場に影響を与えています。

イスラム国は、いずれ衰えるかもしれませんが、現在の世界情勢を見る限り、まだまだ。もともと、9.11そしてそれ以前から芽吹いていたわけです。シリア&イラクへの米国を中心とした地上軍派遣は、かつて米国がイラク戦争を起こした結果、アルカイダやイスラム国を生み出したように更なる怪物を産み落とす可能性が高い。欧米的価値観とイスラム的価値観が真っ向から衝突しているので、簡単に収まらないでしょう。もちろん、イスラム国が全てのイスラム教徒を代弁しているわけではありません。過激派の中にあっても最右翼の過激派である前提です。