金価格が底値から反発の兆しが出ている。12月3日に1045.4ドル/トロイオンスまで下げてから、上昇しつつある。
OPECの協調減産にならず、原油価格は下落トレンド。中国をはじめ世界経済の減速傾向はそのまま。中東を巡る情勢は収まらないまま。では、金価格は本当に底入れしたのでしょうか?
NY金価格の日足チャート:底値を付けて上昇かそれとも反落か?
2015年12月11日:EVOCX
過去の米利上げ時には金価格は上昇
ちょうど、ロイターからヤフージャパンに配信された記事で、金価格が底値を付けたとの記事がある。過去の米利上げ局面で金相場は上昇したケースが多いとの分析。ヤフージャパンのトップに上がる程、金相場の今後が注目されている。
金価格と米利上げの関係
- 1987年は約10か月後に7.5%高
- 1994年は約8か月後に2.8%高
- 1999年は3か月後に30%高
- 2004年は5か月後に16%高
- そして、米ドル/円は利上げ開始後1年間で平均5.8%の下落
このように、米利上げ後、上昇を続けていた米ドルが天井を打ち、下落傾向に出るのではないかと予想している専門家も多い。
●東京金の日足チャート:過去の米利上げ時期を見ると、確かに1999年と2004年はその後に大きく東京金価格が上昇している。ただ1987年及び1994年はそうとは言い切れない。
過去の米国利上げ時期と東京金価格(月初の始値)
- 1987年9月4日 9月は:2148円
- 1994年2月4日 :2月は1347円
- 1999年6月30日 :6月は1048円
- 2004年6月30日 :6月は1394円
「12月の米利上げを機にドルが天井を打てば、金価格の反転が期待できる」(エモリキャピタルマネジメント・代表取締役の江守哲氏)という。ドル建てで取引される金は、ドルと基本的に逆相関関係にある。 「先行きを見越した売買が入りやすい」と、ばんせい投信投資顧問・商品運用部ファンドマネージャーの山岡浩孝氏は話す。 ヤフーファイナンス:金価格は底入れの気配
- 円高が来る:江守哲氏の記事をもう一つ。
- 過去4回為替は円高になっている:ランド円ドットコムさんが調査した結果。
利上げ後に金相場上昇よりもドル安円高になる方が相場予想としては現実的。
金価格は、米国の量的緩和終了前に、他の金融市場に先駆けて下落したように市場のカナリア的な要素を持つ。
ECBの量的緩和に対する市場の失望
12月3日、ECB(欧州中央銀行)は、金融政策決定会合で預金金利の引き下げと量的緩和の期限の延長を決定。
- 量的緩和の延長:2016年9月から2017年3月
- 中銀預金金利を-0.2%から-0.3%へと0.1%引き下げ
ドラギ総裁が追加緩和を行うことを市場に伝えていたこともあり、典型的な噂で買って事実で売るという相場になり、金融緩和にかかわらずユーロは大幅高となった。市場が期待しすぎていたとノボトニーオーストリア中銀総裁の発言もあったように、量的緩和や中銀に対する期待が大きかったのかもしれない。
しかし、一方では、金融緩和をしても景気回復やインフレにつながらない実体経済に対して、国民及び市場が愛想を尽かすリスクもある。ユーロ安や緩和はドイツ経済を利してもギリシャやスペインには効果があるのか?トルコや中東・アフリカにダメージを与えるのでは?
クルーグマン教授が日本の量的緩和とリフレ政策に対して、一部誤りを認める発言をしているなど、量的緩和に対する疑問が出てきています。異次元緩和は失敗だった:クルーグマン
下落を続ける商品市場
ブルームバーグの12月11日記事によると、金価格や天然ガス価格は2016年上昇する可能性ありと予想する専門家は多い。2015年はほとんどの商品価格が下落。ブルームバーグ商品指数は2015年に24%下げて、3年連続マイナスの可能性あり。
しかし、中国経済の減速を受けて供給過剰となった分の調整ができつつあり、そろそろ底入れの可能性が出てきている。ただし、景気回復や大幅上昇ではなく、底入れか安定の兆しが見えているとの見方が中心。
アジア・欧州・米州:108人のアナリストやエコノミストの予想
- 金価格・小麦・天然ガスは来年上昇する可能性あり
- 銅価格は大半が悲観的
- WTI原油価格は上昇予想と下落予想が半々。来年の高値予想平均は56ドル、安値予想平均は33ドル
現在、米国では大統領選挙の共和党候補にトランプ氏が出馬し人気を集めています。また、フランスではパリテロの影響もあり極右派が同じく人気を集めています。格差問題や宗教問題・国家や民族の垣根をなくすグローバル化の反動によるテロや宗教紛争などのリスクが金相場の将来に影響を与えるでしょう。米利上げの事を考えると、すぐに金価格が底入れするかは不透明、ただし大局的に見た場合は、投資家のリスク不安が増していることからも金投資が増える可能性は高いのではないでしょうか。産金コストからも1,000ドル割れは長期的に買い水準。もしかしたら、思ったよりも早く金相場注目が集まるかも。まずは12月15・16日のFOMC待ちです。