シェール革命で生産量が向上し、米国は国内で石油を賄うことになったため、大きく下落した原油価格。先進国が求めるインフレ率2%達成を危うくし、だぶついた緩和マネーにより株式市場は上昇。金利は下落。もちろん、金価格にも大きな影響を与えています。
2016年の原油価格の底値と上値はどのような水準に位置するのでしょうか?
原油価格の底値と上値
2015年は、ほとんどのの商品相場が下落しました。原油を筆頭に鉄鉱石・天然ゴムをはじめ白金や金価格も大きく下落。
ただ、商品は、需給バランスの関係上、安くなると供給が減り価格が上がるという法則があり、一部産油国の財政危機・シェール企業のリグ減少が出ており、安値での供給に限界が近づいています。つまり、行き過ぎた安値で淘汰される企業が登場して、原油価格が安定するという構図。
原油価格の反発は、2016年に起きるのではないかと考えられています。
原油価格下落のポイント
- シェールガス・オイル開発で供給増加
- イランの経済制裁解除で供給増加
- IS(イスラム国)による闇石油流出
- 産油国が高価格よりシェア確保を意識
- 中国経済の鈍化で需要減少
- 米FRBの利上げで緩和マネー減少は原油や金価格下落に繋がる
- 中東をはじめとした地政学リスクの高まり
- ベネズエラやロシアなど産油国経済の破綻
2015年は供給増加面が取り沙汰されて、原油価格が下落していった年でした。2016年は下がりすぎた原油価格が引き起こす影響が出てくる年です。
シェールの採算ライン
採算ラインは、技術革新が進めば低下余地がありますが、約40~60ドルと見られています。
●シェールオイル生産企業は、原油価格低下という外部環境の変化に適応するため、コストの低下と生産効率向上による採算ラインの引き下げに取り組んでおり、増産は可能だと考えられます。
●シェールオイルの開発は2010年頃より本格化したため、コスト低下の改良余地が大きく、未だ発展途上の技術です。実際、リグ当たり生産量は5年前と比較して2-6倍に拡大しており、生産性は飛躍的に向上しています。
●米シェールの平均的な損益分岐原油価格は足元約60 ドル/バレルまで低下したとみられますが、今後更に低下すると予想されています。
ゴールドマン・サックスのレポートは、メディアでも取り上げられることが多く、約60ドルと見ています。
シェールオイルの採算コストはすでに平均50ドル台にまで下がってきているだろうと推測できるからです。 確かに、シェール油田のなかにも、採算コストが70ドルを上回るところがあるのは事実でしょう。ところが、たゆまない技術革新によって、いまや大半のシェール油田では採算コストは50ドル程度まで下がってきているのです。実際には、コストが30ドルを下回る油田もあちこちに見られるほどなのです。もちろん、これからも技術革新が進むことによって、平均の採算コストは大きく下がっていくだろうと、弊社は予想しています。今後の原油市場の価格推移にもよりますが、おそらくは、あと2年くらいで採算コストは40ドル程度まで下がっていってもおかしくはないでしょう。
アセットベストパートナー:2014年10月27日
石油天然ガス・金属鉱物資源機構の野神隆之主席エコノミストによるとサインさんラインは60ドルと予測。2015年4~6月に原油価格が反発した時に、60ドル付近で米国のシェール稼働率が回復したとのことから、採算ラインを60ドルと予想しています。2016年後半は50ドル台で推移するのではないかと野神氏は日経マネー誌の記事に執筆している。
以前、ロイターの記事でも2015年に反発を見せた60ドル~65ドルの水準を今後の天井として予想していました。
●WTI原油月足チャート:DMMCFD
緑で囲んだのが一時的に原油価格が反発した局面。底値としては20ドル台ではないかと予想する専門家が多い。一部には10ドル台まで落ちても不思議はないという説も。
SBI証券:原油価格の考えうる底値としては、シェールオイル生産の現金コストである1バレル20ドルが目安となります。
石油連盟の木村康会長は、30ドル割れのレベルに対して、今が底値だと発言。価格が低い分、原油の需要が増える効果があり、現在の1バレル30ドル割れという状況から、ことしの半ばから年末にかけて40ドルに向かっていくのではないかと、底入れを示唆。
- 米週間石油在庫統計の解説
- ベーカーヒューズのリグカウント数:米国及びカナダの掘削リグをカウント。
- 世界各国の原油生産・輸入・輸出量をグラフ化
原油価格が金相場に与える影響
金相場は、通貨としての側面と商品(コモディティ)としての側面の二つを持ちます。ゆえに、原油と金相場の相関性は、鉄鉱石やゴムなどの工業製品の原材料に比べて弱め。商品として見れば、原油価格が下がるとコモディティとしての金価格も下がりやすくなります。【金価格の変動要因を詳しく!】
原油は何を生産するにも必要な物質であり、安くなるとデフレ高くなるとインフレをもたらします。それが金相場にも影響を与えるというのが商品としての側面。
一方、現在の市場では、原油価格の下落は世界経済のリスク要因とみなされていることから、原油下落=安全資産への投資との観点によって、金価格が上昇しやすくなっています。
●GMO証券:NY金価格とWTI原油の比較チャート
2015年からのNY金価格とWTI原油の比較です。一時は50%を越える程、下がった原油に比べて、金相場は10%程下がっただけ。
そして、原油価格の下落が大きな経済的リスクを呼ぶレベルにまで下がってくると金投資量が増えて上昇に転じています。
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