沖縄沖の海底熱水鉱床(チムニー)で黒鉱養殖を行い金銀の採取に成功

<スポンサーリンク>

国立研究開発法人海洋研究開発機構は、2010年9月の地球深部探査船「ちきゅう」が生成した沖縄トラフの人工熱水噴出孔の上に生成されたチムニーに有用金属元素が含まれていることを2016年2月25日に明かしました。

ヤフーのニュースでは、海底の金銀を採取に成功と、かなり前のめりな見出しを付けていました。海底から金銀を含む有用金属が掘り出せれば大きいですね。でもそもまでの話ではなく、金価格に影響を与えるニュースではありません。


国立研究開発法人海洋研究開発機構が沖縄沖の海底熱水鉱床で金銀を採取

海底探査船の「ちきゅう」が2010年に水深1000mの海底に穴を掘った後を観察したところ、そこから熱水が噴出してできた鉱床に、金や銀を含む様々な有用金属元素が含まれていたとのニュースです。場所は沖縄トラフ伊平屋北海丘。

まさに、温泉のよう。温泉もパイプや周辺の様々な付着物を生じますね。

成長するチムニー

孔をあけた後に成長するチムニー:出典;国立研究開発法人海洋研究開発機構

人工熱水噴出孔(C0016A孔)上に急成長したチムニーは、陸上の黒鉱鉱床には比較的まれな、黄銅鉱と閃亜鉛鉱の樹枝状組織や化学累帯構造を有する球状黄鉄鉱などの組織が多く観察されました。これらの構成鉱物や組織の詳細な観察は、チムニーの生成機構の解明に寄与すると考えられます。また、人工熱水噴出孔上に急成長したチムニーの硫化鉱物に富む部分は、平均で銅4.5%、鉛6.9%、亜鉛30.3%、鉄8.7%、数百ppmの銀および1.35 ppmの金が含まれていることを明らかにしました。

これらの濃度は、陸上黒鉱鉱床の高品位鉱石に匹敵するかそれ以上であることから、今後人工熱水噴出孔を利用した硫化物チムニーの養殖技術への応用が期待されます。海洋研究開発機構 有用金属元素を高濃度で含む硫化物チムニーが短期間で成長

海底熱水鉱床から採掘されれば金価格はどうなる

人工的にあけた孔から成長したチムニー(金属鉱体)には、多くの銅や亜鉛・鉄そして、わずかの金銀が含まれていました。2013年の成分解析によると1トン辺り金1.35g。もし、陸上にあって採掘できるのならば大きいのですが、海底1000mのところから掘り出すことを考えれば、採算にはまったく合いません。シェールオイルのように、原油相場に大きな影響を与えるニュースにはならず、金相場は、本ニュースにまったく反応していません。

金投資を行う場合、未知の鉱山から大量に発見されて金価格が暴落するリスクは懸念点の一つ。

今回のような熱水鉱床の養殖ではなく、海底のどこかに金が大量に存在する金鉱山が存在することは確かでしょう。しかし、産金という作業は、非常に大変で金塊がそのままとれるわけではありません。他の金属との合金として産出されたり1トン辺りの岩石から数グラムから数十グラムというわずかな量を抽出する方法。これでは、海底から産出する金が金価格に影響をもたらすのはまだまだ先のこと。もともと、金本位制が終わったのも成長する世界経済に合わせて産金量を増やせなかったことも理由の一つ。すなわち産金量が爆発的に増えるリスクは少ないと言えるでしょう。

同機構が掘削したのは、那覇市の北北西約190キロの海域「伊平屋北海丘」。2010年、地球深部探査船「ちきゅう」で水深約1000メートルの海底に直径50センチの穴を掘り、定期的に観察した。その結果、約310度の熱水が噴き出して人工的にできた鉱床は1日0.11トンのペースで高さ7メートル以上に成長し、13年の成分解析では1トン当たり金1.35グラム、銀数百グラム、銅45キロを含んでいた。 今井亮・秋田大教授(鉱床学)によると、今回の金の含有量では採算を取るのは難しいが、銅やレアメタルも多く含まれれば価値は上がるといい「日本の領海内で資源を確保しておく意義は大きい」と話す。毎日新聞:ヤフーニュース

ヤフーニュースでも今井亮秋田大学教授が採算を取るのは難しいと語っています。

また、ここで比較されている黒鉱鉱床は、海底火山から噴出した熱水が海水で冷やされて生成されたもので、海底火山のある場所に多くの黒鉱鉱床が発見されています。その後の地殻変動で陸地になれば、有用な鉱山になるわけですね。海底火山や火山周辺にはその膨大なエネルギーを生かして、温泉・鉱山ができるということ。

黒鉱について詳しく知りたい方は、東北大学総合学術博物館でご覧ください。

金相場に直接的な影響を与えないとはいえ、未来の日本や地球を考えると、非常に有用な研究成果です。国立研究開発法人海洋研究開発機構 海底資源研究開発センターの資源成因研究グループ 研究員 野崎 達生氏、川口 慎介氏をはじめ関係者の努力と試みに心から賞賛いたします。