バーナンキ元FRB議長が推進した量的緩和。サブプライムローンから始まる金融危機を抑える事を目的に始まりましたが、そろそろ量的緩和バブル崩壊の時期が近づいているとの認識が金融市場で強まっています。バブル崩壊への警戒から金価格は上昇トレンド。
バブル崩壊時期がいつか予想することはできませんが、いつか破裂することは数年前から複数の人が予測していました。実際、去年辺りからジョージ・ソロス氏やロバート・キヨサキ氏をはじめ、そろそろ崩壊の日が近いのではとの声が高まっていることをご覧になった方もおおいのではないでしょうか。。
しかし、そのきっかけになりそうだった米FRBの利上げスピードは遅く、意外にしぶといのではとの見方も出ています。バブル崩壊の予兆になりやすい金相場に注目しながら世界経済と金融市場を見ておきましょう。
FRBをはじめとした中央銀行が推進する量的緩和バブル
債務の証券化が、サブプライムローンを生み巨大なバブルになり、リーマンショックから世界金融危機へとつながりました。それをFRBは量的緩和によって市場に資金供給して助けようとしました。
2009年3月にQE1、2010年11月にQE2を決定。ベン・バーナンキ氏は、世界に過剰流動性の提供を行いました。ブルームバーグ記者の山広恒夫氏は著書で基軸通貨バブルと呼び、オバマ大統領とバーナンキ氏によるバブルが起きることを予測しています。
基軸通貨バブルは、米国が回避しようとしているデフレ圧力をそのまま、日本・欧州など先進諸国に輸出。その一方で、経済が急成長する中国やインドなどアジアやオセアニア諸国、さらにブラジルやロシアにはホットマネーを供給し、国際経済をかく乱させる。オバマ発金融危機は必ず起きる
そして、いずれ、FRBは、富の裏付けがないまま、ドルの増刷を続けていることに気付く。
金本位制の時代は、いざとなれば紙幣を金(ゴールド)と交換できることから、紙幣発行量に制限がかかっていました。
しかし、金本位制を放棄してから、米ドルをはじめ通貨には、何の裏付けもありません。中央銀行は無限に紙幣を刷ることができ、国内で借金が賄えている場合は、問題は最小限に抑えられます。しかし、紙幣を刷ればするほど、通貨の価値や信用は薄くなっています。
だからこそ、中央銀行は通貨の番人として政府からの独立性を許可されているわけですが、量的緩和・先進国の通貨安政策はその通貨の番人としての役目を自ら放棄しているとも言えます。
すでに資金がじゃぶじゃぶにある金融システムに、お金をいくらばら撒いても需要は伸びずに資産バブル(量的緩和バブル)を生むだけ。実際、株価と不動産価格はリーマンショック以前の水準に回復しています。ところが、その副作用として米国をはじめ各国で資産格差は拡大。
●日経平均とNYダウの月足チャート:GMOクリック証券 株価はリーマンショック以前の水準をとうに回復。
実態経済は、雇用なき経済成長・株価上昇。ここ数年の技術革新である携帯電話・スマートフォン・ドローン・IT化は、消費者の作業を減らす素晴らしい技術である一方で、雇用を無くす一翼も担うことに。今後、出てくる人工知能・ロボットなどもその方向に進みます。
この量的緩和バブルが崩壊する時期は、金価格の動向を見ることで早めに掴むことができるかもしれません。米国のQE終了についても金相場は先取りしてしっかりと暴落を演じていました。
近年のバブル事例
7~10年に一度位の頻度で、バブル及び崩壊は生じており、そろそろ次のバブル崩壊が起きるタイミング。
先進国のバブルはどんどん規模を拡大中。今は、サブプライムローン崩壊からはじまった次の危機が近い。おそらく量的緩和バブルもしくは中央銀行バブルというネーミングになるのではないかと思います。
- 1980年代末から1990年はじめ:日本の株式・不動産バブル
- 1999年から2000年:IT株式バブル
- 2008年:サブプライムローンバブル
ゴールドマンサックス証券の土居雅紹氏も以前から、量的緩和バブルに注目していた一人。
日米独の株価が中央銀行の量的緩和政策に依存していることから、やはり今回の大相場は「量的緩和バブル」と呼ばれるべきものであるといえそうです。もう少し対象を絞って考えるのであれば、崩壊が始まった原因が米国の量的緩和政策の終焉であり、日欧の中央銀行の量的緩和では支えきれないことから「米国量的緩和バブル」といっても良さそうです。e-ワラント:量的緩和バブルという呼称が浸透したらそろそろ終盤
中央銀行が、量的緩和をしてもマイナス金利を実施しても上昇するのは株価と不動産だけ。雇用には対して効果がないということがすでに示されつつあります。米国の雇用統計は数字上は良くなっているが職をあきらめた人がカウントされていないこと、貧富の差が拡大していることに対する怒りが高まり、FRBや政府機関への不信感が強まっています。
ジョセフ・スティグリッツ教授が来日して述べた意見では、量的緩和や低金利の問題を指摘!BISもマイナス金利策・金融政策の行き詰まりを指摘。
量的緩和政策は不平等を拡大し、金融市場にゆがみをもたらした可能性。競争的な通貨の切り下げを生むが、ゼロサムゲームにしか過ぎない
低金利は資本集約型テクノロジーを生み出し、雇用なき経済回復に繋がる可能性 マネーアイデア
BISの税制経済部門トップであるClaudio Borio氏は、2016年第1四半期報告で、「銀行間の資金の貸し借りがこの2年間で初めて収縮している。同時に、世界経済の成長が止まり、債務総額が上昇を続ける中、欧州や日本がマイナス金利政策を実施したことは世界経済に脅威となっている。市場の大幅変動を抑えるための道具である金融政策は行き詰まりを示しており、最近の大嵐は、中央銀行が2008年以降大きな重荷を背負わされていることのメッセージである」と述べている。マネーボイス
ECB・日銀がいくら量的緩和を実施しても効果がないのは、マイナス金利・量的緩和には限界があり、打つ手がないことを見透かされているから。
金本位制を失った中央銀行は、空前の不況に対して量的緩和で対抗しましたが、残念ながら大きな成果を上げられずなかったために、その信頼性は大きく揺らぐことになってしまいました。
さらに、モラルハザードの蔓延として、金融機関及び株式投資家は、バブル崩壊による株価下落に対し金融システムを守るという名目で中央銀行が守ってくれて当たり前との概念が浸透。イエレンプットなどと呼ばれていますね。
量的緩和バブルの崩壊時期
グローバルマクロ・リサーチ・インスティテュートが執筆している量的緩和の効果と2016年の予想は以下の通り。大変、ためになる記事をいつも書いていますので参考にさせていただいています。
量的緩和の効果
- 長期国債買い入れによる長期金利の押し下げ
- 低金利による不動産市場の活性化と建設雇用の増加
- 通貨安による輸出増
- 債券市場からハイリスク資産への資金の流入
量的緩和で世界を巡るマネーは米国の利上げで逆流する。日本や欧州の国債バブルがはじけて、長期金利が上昇し始めたり金融危機の兆候が起き始めれば、量的緩和バブルは崩壊。不動産や株式から資金が逃げ出して株式市場は崩壊するというシナリオ。
投資家ジム・ロジャーズ氏も2008年のサブプライムローン危機以上のバブル崩壊になるだろうと予測。その根本的な原因は中央銀行の金融緩和と政府の財政赤字が原因であり、中央銀行は廃止すべきとの論も展開。
米FRBは利上げを先送りでバブル崩壊時期は遅れる?
米国が利上げを次々に行えば、量的緩和で支えてきたバブルは崩壊する可能性は高い。しかし、米経済の変調を読み取っているFRBは利上げを先送りし、量的緩和の再開すら議論しつつある。ならば、今のバブルは崩壊せずにまだしばらく続くかもしれません。
ただ、いつまでも世界経済を緩和で支え続けることはできません。それは更なる問題を引き起こしバブルを膨らませて社会的な問題をおおきくするだけに過ぎない。
利上げ先送りで金価格は上昇傾向。バブル崩壊ならばそれに巻き込まれて一時的に下落する可能性はあるも金相場に強気の人は増え、上昇する可能性は高い。
膨らんだ風船をゆっくりとしぼませるのは難しいのではないでしょうか。中央銀行にできるのは破裂しないように先送りするだけ。そのため、バブル崩壊の時期は意外と遅くなるかもしれないとは考えています。
●参考サイト
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