トランプ政権のオバマケア代替法案はフリーダム・コーカスに屈する:2017年3月27日週の金相場見通し

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世間は、トランプ大統領一色。先週の金価格も米国の動きに振り回される日々でした。G20の声明では保護主義への対応という言葉が削られて、自由と保護の間で貿易体制が揺らいでいます。

さらに、米国の予算案・オバマケア代替法案と様々な問題が出てきており、米長期金利は低下・金価格は買戻しの動き。

日経平均やNYダウなど株価は乱高下。金相場をはじめとした貴金属は上昇しました。

●各金融市場の動き:GMOクリック証券のCFD 2017年3月26日

金価格

米国トランプ政権始動による混沌

いよいよ、実務に入ったトランプ政権は、チェンジを掲げて登場したオバマ政権以上に変化をもたらしています。そのための抵抗も激しく、改革がとん挫するリスクや世界をカオスに叩き込むリスクも存在。
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3月18日に閉幕したG20財務省・中央銀行総裁会議

G20が大事にしてきたポリシー。保護主義への対抗という言葉が入りませんでした。これは、2014年9月以来の出来事。通貨の競争的な切り下げは回避すると通貨安競争への脅威は盛り込まれたものの自由貿易路線は一歩後退した印象を受けます。

20か国財務大臣・中央銀行総裁会議声明(仮訳)(2017年3月17-18日 於:ドイツ・バーデン=バーデン)

トランプ政権の予算案(2018会計年度)

米国政府の予算は、約4兆ドル。歳入は約3兆5千ドル。このうちの約1兆ドルについての予算案が公表されました。2017年10月~2018年6月分。

メディアでも勝ち組・負け組と区分けされる程、トランプ政権の意向が入り、大胆な内容になっています。これまで公表したいた通り米国ファーストに沿って防衛予算は増えて環境予算は減少。

●予算案の前年度比増減

  • 軍事予算:9%増加
  • 国土安全保障予算:7%増加
  • 環境保護庁(EPA):31%減少
  • 国務省:29%減少
  • 農務省:21%減少
  • 労働省:21%減少
  • 保健福祉省:18%減少
  • 商務省:16%減少
  • 教育相:14%減少
  • 住宅都市開発省:13%減少
  • 運輸省:13%減少
  • 内務省:12%減少

IRONNAの記事からデータは取得しましたが、大胆な改革。中でも環境保護庁は、行き過ぎた規制を指摘していただけにバッサリと削減されています。

ちなみに、メキシコの壁建設予算は26億ドルを盛り込んでいます。

これから、議会との折衝が始まりますが、どこまで、予算案は原案通り進むのでしょうか。

環境・グリーンエネルギーに注力したオバマ政権とは、反対の方向に進むことになります。リベラル派のメディアからは、早速、こっぴどくやられています。

オバマケアの代替法案:フリーダム・コークスの反対でAHCAを断念

医療保険制度改革法(オバマケア)の代替法案「アメリカン・ヘルス・ケア・アクト」(AHCA)を共和党は断念しました。(2017年3月24日)

敵は民主党ではなく共和党の保守強硬派である「フリーダム・コーカス」。強固なる壁を乗り越えられず、オバマケアをかなり改革し、削った内容でも保守強硬派は納得せずに見送りました。結局、米下院で25名を擁するフリーダム・コーカスの協力を取り付けられず。

議会予算局(CBO)の試算によると2026年までの10年間で財政赤字を1,500億ドル削減させる見通し。当初の3,370億ドルから44.5%縮小するとはいえ、保守派を抱き込むには不十分だったようです。ちなみに医療保険加入者は従来案と変わらず、2018年で1,400万人、2026年までに2,400万人の減少が見込まれていました。AHCAへの移行に伴い無保険者は2026年までに5,200万人に届くと予想され、オバマケアを維持した場合の2,800万人の倍以上に膨らみます。MYBIGAPPLE

民主党は、当然、賛成に回りませんし、フリーダム・コークスは、オバマケアが一部残ることに対して妥協せず。

これで、オバマケアがそのまま存続することを考えれば、妥協した方が共和党保守派としても得策だったと考えるのですが、米国政治の分断と複雑さは想像を超えるのではないか。さらに、これからも混沌が生まれるのではと考えています。

フリーダム・コーカスとその影響力について、2015年の記事で住友商事が詳しく解説してくれています。長文ですので、抜粋しておきます。

  • 2015年1月に下院共和党の保守派により発足
  • ティーパーティー運動に参加
  • 小さな政府を目指し、共和党でも保守的
  • 政策実現のためには政府閉鎖しても良いと考えている
  • 9人の創設者以外は正式公表しない
  • 2015年10月末では、36人がメンバー。(共和党下院議員の15%)
  • メンバーの8割が合意した議案には拘束がかけられ団結力が強い
  • 米国社会は無党派層が拡大しているが、民主党はリベラルに偏り、共和党は保守派で結束
  • 多くの議員は、無党派層の考えを知らず、その意見を取り入れていない
  • 選挙区で思想が偏り、その選挙区内の多数派が支持する強硬政策を追求

下院議長が、ジョン・ベイナー氏からポール・ライアン氏に交代した時のお話しでしたが、これからも、トランプ政権の実務について、問題を起こす恐れがあります。

より厳密に言うならば、オバマケア代替法案が通らない場合、法人減税に与える影響は比較的少ないが、インフラ投資が通らない可能性は示唆されることになるかもしれないというのが私見である。法人減税は共和党的だが、インフラ投資は共和党的ではないからである。グローバル・マクロ・リサーチ

インフラ投資関連法案が、通らないとなると、現在、買い進められている米国株式には大打撃を与える可能性があります。それもあって、オバマケア代替法案の難航を見て、金価格が上昇したとも言えます。

インドの季節需要も増える時期ですし、フランス大統領選挙も控えていることから、下がると買われる金相場の状況に変化はないと思います。

イギリスで起きたテロ事件も、治安維持を優先する方向に動きがちですし、このところ、マクロン氏優勢が伝えられるフランス大統領選挙も結果がどう転ぶかはまだ分かりません。

●NY金価格の日足チャート: 2017年3月26日 EVOCX

NY金価格の日足

NY金価格は1200~1250ドルの間で動いています。一目均衡表の雲からもレンジ相場からやや上昇傾向というイメージ。1250ドルの頭は重そう。

大きな材料待ち。

●東京金価格の日足チャート

東京金の動き

為替相場の円高で弱含み。雲の形状が悪くなっており、横這いから弱気。雲に跳ね返されての反発にも注意しておきたい。