需給バランス的に白金価格は強気筋が多い。ところが、なかなか上昇の兆しを見せず、2017年に入ってからも下落を続けていました。その白金価格がようやく上向いています。
長期的には、欧州の自動車産業が、ディーゼル・ガソリン車から電気自動車に切り替わる構造転換が待ち構えています。この技術革新の状況次第で、プラチナ・パラジウムの自動車触媒需要が減るリスクがあることを覚えておきましょう。
ただ、短期的には、プラチナの需給・金価格との差から、上昇余地があることも確かです。
欧州の景気回復で、白金価格が上昇
◆NY白金の月足チャート:EVOCX 2017年8月10日
2016年1月21日811.4ドルの安値を付けた後に反発するも、8月10日の1199.5ドルをピークに下落に転じました。2017年7月11日には900ドルを割り込み、891.4ドルまで下げています。そして、ここから反発傾向を見せているのが現状。
米国の利上げによる金価格の動きに合わせた動き・欧州の景気回復の遅れなどが下落の要因。
白金価格の変動要因
白金が上昇に転じた理由はいくつかあります。
1.欧州の景気回復:米国に比べて遅れていた欧州の景気がユーロ安の影響などで回復しつつあり、ECBのテーパリングが話題になるほど。7月のドイツ新車登録台数は、前年同月と比較して1.5%増加の28万3080台。欧州の景気回復は、プラチナの自動車触媒需要増加を促します。
2.南アフリカの混乱:ズマ大統領の汚職を巡る混乱、高い失業率などで白金の供給7割以上を擁する南アフリカの供給不安が台頭。白金大手のロンミンは、経済低迷・白金価格の低迷により、白金精製設備(最大処理能力年間50万トン)を含みリストラ策を公表。マリカナ鉱山の一部施設維持が困難と話しています。
3.北朝鮮リスクの増大:北朝鮮は米領グアムへの攻撃を示唆し、トランプ大統領は、脅しが続けば強烈な攻撃を行う旨を宣言。実際の軍事行動が起こる可能性が高まっています。
4.白金の需給:2016年のプラチナ鉱山生産は189.2トン(前年190トン)。需要は255.9トンと前年からは-1.4トンの減少。2017年の見通しでは、鉱山生産187トン、総需要236.6トン。リサイクル59トンなので9.4トンの供給過多。近年、プラチナの需給バランスは、供給不足が通例。2015年は-13.6トン、2016年も-6.9トン、2017年は6年ぶりの供給過多。2017年5月のジョンソン・マッセイ社データ
6年間の供給不足を穴埋めしてきたのは、過去の地上在庫と言われています。鉱山からの生産が少ない分、在庫からのリサイクルで補っていました。ここは、2017年もほぼ変わらずで、需要の減少が供給過多の要因です。需要が減った理由は、中国の宝飾品需要減少。
一方、金と比べて割安になったプラチナは、欧米や日本での需要が伸びており、田中貴金属では、2016年のプラチナ地金販売量は約15トンと2015年に続いて高水準を維持。
◆NY金価格(白線)とNY白金価格の差:週足チャート
テクニカル的には、そろそろ上向いてもおかしくないプラチナ相場。短期的には欧州や新興国の景気が順調に回復していけば、更なる上昇もありえます。中国をはじめとする新興国の宝飾品需要が振るわない点・長期的な自動車産業の懸念は悪材料。
金価格の動きを追いかける点では、地政学リスクの高まりとFRB・ECBをはじめとする金融引締めが上昇・下落要因。
すでに、かなりの安値圏にあるところからも、安値を拾っておくのもいいと思います。
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