ワールド・ゴールド・カウンシルは、2018年の金価格の見通しを公表しました。まず、最初に断っておくとワールド・ゴールド・カウンシルは、金鉱山会社によってつくられた非営利団体で、金投資の拡大や金価格上昇の方向にバイアスがかかっているということ。
2017年に投資家は収入が増えて、経済が回復したことに加えて金価格が上昇したことから、ポートフォリオに金投資を追加。世界経済はゴルディロックスの適温経済となり、米国・欧州など先進国をはじめとした成長が加速。リスク資産が高騰して、金価格も米ドルに対して13.5%の上昇を見せました。
今後の金相場には、4つのポイントがあります。
世界経済の成長と金相場
2017年に成長した世界経済は2018年もその流れが継続すると予想されています。WGCの考えでは、経済の継続的な成長は金投資の需要を増やすでしょう。
強い経済成長は、そのまま金価格の上昇を意味するものではありません。それは、金投資のリスク回避的要素とは矛盾します。金価格は、宝飾品や工業的な需要よりも投資需要に左右されます。投資家は、リスクを恐れて金を買ったり、米ドルに不安を持ったりして金投資を増やします。
過去数か月の上昇は、米ドルの下落に伴う金価格上昇の要素が強い
中央銀行のバランスシート縮小と金相場
世界経済の拡大は、金融政策の引き締めをもたらす可能性があります。金利が上昇すれば、金投資が減るのはセオリーであり、中央銀行の行う金融正常化は、金相場にとってマイナスになりがち。しかし、WGCは、この金融正常化が金に与える影響は少ないと考えています。これは、金融引締めが、金融市場に圧力をかける可能性があるためです。高金利の債券などは、より金利の変動に敏感になるでしょう。
中央銀行のバランスシート縮小は、金価格にプラスになる可能性があります。
資産価格と金
資産価格は、NY株をはじめ世界各国で過去最高を記録しました。そのため、資産価格のリスクは高まっています。すぐに金融危機が起こるということを意味するものではありません。投資家の収入が上がると、宝飾品の需要が増えます。そして、全てが破綻した時には、投資家が危険な資産から安全な資産に移すのに金投資は最適です。
市場の透明性・効率性・アクセス性
金市場は、ここ数年で透明かつ効率的になりました。ロンドン金属取引所は、LMEプレシャスを開始し、価格の透明性と効率性を向上させました。
利便性・透明性の向上は、仮想通貨などを意識してのセリフでしょう。
トータルで見ると、世界経済の成長は、金投資の需要を増やして、価格上昇につながりやすいことをWGCは指摘しています。
一方、FRB・ECBの金融引締めは、金利を生まない金価格へのマイナス要因。しかし、金融引締めが金融市場・資産価格の下落を生むリスクが存在し、相殺される可能性が高いのではとの見通し。
実際のところ、2018年2月1日現在、ユーロ高米ドル安が進んでいるために、金利上昇局面にありながら、金価格は対ドルに対して上昇トレンドを描いています。これが、WGCの望む最良のシナリオでしょう。
この記事へのコメントはありません。