新興国経済が好調だと金は買われやすくて上昇し、不調だと売られやすいというのが、近年のセオリー。
2018年2月5日に起きたNYダウの1500ドル安への対処としてFRBのパウエル議長は、市場介入に動いていた様子。=パウエルプット。
FRBは、1週間で110億ドルのMBSを買い入れることで、リスク商品の買い支えの原資を作るとともに、市場の下落に対応するというメッセージを発していたとのこと。
NY金価格は上下にブレを見せながら、1300ドル台を維持、一時は下がっていた原油価格も上昇しています。
新興国経済の好不調と金価格の動きは繋がっている
◆NY金価格の日足チャート 銀・白金
GMOクリック証券のCFD
米金利は上昇を強めており、10年債で2.87%、2年債で2.62%まで利回りが上昇しています。にもかかわらず、米ドル安に動いており、相対的に金価格は1300ドル台での高値維持が継続。
近年の世界経済は、ゴルディロックスの元、好調を維持してきたものの、2018年になると、米金利上昇をきっかけに不調へと陥りました。米金利上昇&米ドルの上昇に加えて、米国の貿易戦争のあおりを受けて、2018年上期は、全般的に悪化。
ロイターによると、対ドルで、アルゼンチンペソ30%、トルコリラ17%、南アフリカランド11%と大幅に下げています。新興市場債券ファンドは、流入から流出に転じるなど、マネーの巻き戻しが生じています。
では、金価格は、この世界経済の動きに対してどう動いたのでしょうか
2018年7月5日
新興国経済の不調にあわせて、ブラジル株やNY金スポットは下落。
金投資への需要は、中国やインドなどの新興国が中心であり、世界経済及び新興国経済が勢いを失えば、金相場も同じように勢いを失います。
2018年上期は、新興国経済の悪化と金価格安はちょうどリンクした格好。特に、2月の米金利上昇に耐えた後、アルゼンチン・ブラジル・トルコと新興国経済が悪化し、相対的に米ドル高に進んだことで、NY金価格は1300ドルの節目を割り込み下落しました。
特別な危機時は別格
新興国経済が悪化⇒金への需要減・新興国通貨安米ドル高⇒金価格の値下がり
上記が基本的なセオリー。しかし、危機が拡大し、通貨危機まで発展すると話は別。その場合は、資産の移動先として、金が選ばれやすいこともあって、急上昇するケースも存在。
そういったリスクオフ時は、相対的に米ドルと金のどちらに資金が流れているのかチャートやニュースから判断しましょう。金ETFやファンド運営者は、金融危機を過大に言い立てることも多いので、実際の値動きをしっかりと見ること。
ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズの金戦略責任者=ジョージ・ミリングスタンレー氏は、新興国の通貨安による資産目減りを防ぐために、金の買いが増えて、2018年中に1400ドル台を付けると予想しています。
米金利上昇でも米ドル安&金価格高の理由:2018年2月26日
3月のFOMCでの利上げ路線は確率が高まっており、いよいよ、長期金利は、3%の水準に近づいています。本来は、金利を生まない金価格にとって金利上昇はマイナス要因ながら、ドル安が続いていることもあって、金は買われています。
米ドルは、FRBが金融引締めに動いているものの、以前からの動きで緩やかな利上げという路線に変化はなし。しかし、ユーロは、金融政策を引締め路線に転換しつつあり、日本は、これ以上の緩和余地がない。
さらに、米株こそ下落したものの、世界経済自体の好調さは続いており、リスクオンの動きも継続中である。そのため、欧州や新興国に資金が流れる動きが生じて、米ドル売り他通貨買いの動きが出ているという流れではないかと考えられます。
米国の将来については、トランプ政権の税制改革&インフラ投資で目先好調&将来の債務負担という面がじわりと重しになっており、こちらも長期的なドル不安につながっているのではないかと指摘されている。以前にムニューシン長官がドル安発言をしたように貿易赤字を解消するためにもドル安の方が都合が良い。
このような理由から金利上昇にも関わらず、ドル安が続いているのでしょう。通貨のセオリーとして金利上昇は短期的には通貨高ながら長期的には通貨安というのがあります。それを前倒して実現しているとも言えますね。
それらの要因が、金利高にもかかわらず、米ドル安金相場高に導いているのでしょう。
となると、新興国経済が勢いを失うと、逆の動き(金価格安)が起きやすいということ。
■来週の注目スケジュール
2月26日(月):米新築住宅販売件数、メルケル首相率いるCDUが連立協定を採決など
2月27日(火):独消費者物価指数速報値、米耐久財受注、米消費者信頼感指数など
2月28日(水):鉱工業生産指数、中製造業PMI、ユーロ圏消費者物価コア指数など
3月 1日(木):法人企業統計調査、中財新製造業PMI、米個人所得など
3月 2日(金):有効求人倍率、米ミシガン大学消費者マインド指数確定値など
3月 4日(日):イタリア総選挙などフィスコ
この記事へのコメントはありません。