金投資で大切なのは、金利との関係。特に、米国の金利に大きな影響を受けます。なぜならば、金は金利を生まない金融商品ですから。
株式であれば、企業が利益を得た分を、配当として株主に分配。銀行預金も、融資等で得た利益を利息として分配します。これをインカムゲインと呼ぶ。
ところが、金投資は、保有している金が、何も生み出さないために、金利や配当が得られません。
金投資と金利の関係
一応、金にもプロ同士で、貴金属の貸し借りを行うリースレート市場も存在していますが、その規模・利息はわずか。
そのため、株式・債券・銀行預金のように、配当・利息を得られないとお考えください
金は、【買値より値上りするかどうかの売却益を狙う】・【他の資産が目減りするのを防ぐ安全資産】としての要素が強いのです。
株は、投資先の会社が倒産したり、利益が上げられなくなることで、損をします。IT化で、デパートや小売業がアマゾンや楽天に押されたように、社会のルールが変化すれば、株価も下がっていきますね。東日本大震災のような未曽有の被害で、安全資産と考えられていた東京電力の株価は大暴落しました。
その点、金投資は、世界中で価値を認められており、どこの国に行っても通用します。そのため、金利が付かなくても、ニーズは常にある物質として、何千年も存在してきました。
金価格と金利の動き:セオリー
金には、金利が付かない。では、市場金利の上下に対して、金価格はどのような反応を示すのでしょうか?
金価格に強い影響を与えるのは、米国の金利。他の変動要因も絡みますから、金利だけで決まるものではないということをご理解ください。その上で、セオリーは次の通り。
1.米国金利の上昇⇒金利を生まない金からは資金が流出して、金価格は下落。
2.米国金利の下落⇒金利面でのマイナス要素が減少して、金価格は上昇。
3.金利の上下による米ドルの動き⇒米ドル上昇・金下落=米ドル下落・金上昇
米金利上昇は、米ドル高に進むときとそうでない時があるので、金利だけでなく、その他の変動要因も見なければいけません。しかし、一番、基本となるセオリーは、米金利上昇⇒米ドル高&金価格安です。
日本国内での円建てによる金投資を行う場合、ドル高⇒円安に動きやすいことにも注目しておきましょう。その場合、米ドル建ての金は下がっても、日本円建てだと上昇していることも。
◆米金利が変動すると、世界中に存在するマネーのポートフォリオを変動させます。下記の図では、米国債と金(ゴールド)だけの割合だけを変化させました。本来は、他の資産についても割合が変化します。
資産家やファンドの考え方として、大量にある資金を一つの資産で持つのは、危険ですから、複数の資産に分散投資します。その判断基準となるのは、リスクとリターンの関係、金利が高いところにお金を投資すると儲かる。、そのため、高金利の資産には、マネーが流入します。ところが、金融危機やリスク時には、高金利資産は、儲かるどころか元本すら割り込む損失が出やすい。そのため、高リスク時には、安全資産にお金を動かします。
金融市場でのリスク・リターンの判断基準は、金利の高低ですから、米国金利が上昇すれば、米国債への投資が増えて、金への投資は減少というメカニズム。
実際の動きをチャートで確認
◆米10年債金利とGoldの年足比較チャート 2018年7月17日 GMOクリック証券
21世紀に入り、米長期金利(10年債)の低下に伴い、金価格は上昇。ただし、2016年に金利が底打ちしながら、金価格も1241.10ドルと高値止まりしているように、金利だけで、相場が動くわけではありません。
◆米10年債金利とGoldの月足比較チャート 2018年7月17日 GMOクリック証券
こちらは、1本のローソク足が、1カ月の期間を表す月足チャート。絶対とは言い切れませんが、いくつかの局面で、米10年債金利の上昇や下落に、金価格が反応している場面があることが分かります。
現代の金投資は、通貨の側面が強く、米金利や米ドルの動きに強く反応しやすいのが特徴です。中東での紛争や北朝鮮の金正恩氏の動向といった地政学リスクよりも、金融市場での動きが重要ということ。
ちなみに、金利&物価が低い(下落)状態をデフレ、金利&物価が高い(上昇)している状態をインフレと呼びます。2016年以降の世界経済は、低金利の適温経済が続きましたが、そろそろ、物価や金利が動き始める時代に入りましたから、金投資の動は、金融市場のカナリア(先導役)としても役に立ちます。
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