現在、一般に「金価格」と呼ばれる価格は複数存在し、現物市場では、ロンドン金価格が最も有力。1919年にロンドンで設立された The London Gold Market Fixing Ltd.(ロンドン・フィキシング) にて1日2回(午前と午後)決定される現物価格。LBMA(ロンドン貴金属市場協会)が管轄します。
先物市場には、ニューヨークや東京の金先物価格があり、相場予想のために大切な指標。
ロンドン・フィキシング=ロンドン金価格
この価格制度は、第一次世界大戦後の1919年以来、金の取引価格を安定化させるために始まりました。フィキシングは日本語で値決めのこと。
ロスチャイルド銀行の黄金の間とその参加者
ユダヤ系財閥として有名なロンドンのロスチャイルド銀行の黄金の間で、ロスチャイルド家当主をはじめとした有力な銀行家が集まり、全世界の金価格の値決めを土日祝日を除き午前10時半と午後3時の2回行います。(フィキシングプライス)ただし、現在のメンバーにはロスチャイルド直系の会社は含まれていません。
値決めは、下記の五社が顧客の注文をまとめてせりを行って決定します。
ゴールドフィキシングの初期メンバー
- ロスチャイルド・アンド・サンズ (N.M. Rothchild & Sons Ltd.)
- モカッタ・アンド・ゴールドシュミット (Mocatta &Goldsmid Ltd.)
- サミュエル・モンタギュー(Samuel Montagu& Co., Ltd)
- シャープス・ピクスレイ(Sharps Pixley Ltd.)
- ジョンソン・ マッセイ(Johnson Matthey Bankers Ltd.)
しかし、2004年に英投資銀行のN・M・ロスチャイルドがメンバーから撤退します。
現在のメンバー
- スコシア・モカッタ(Scotia-Mocatta)
- バークレイズ・キャピタル(Barclays Capital)
- ドイツ銀行(Deutsche Bank)
- 香港上海銀行(HSBC)
- ソシエテ・ジェネラル(Societe Generale)
●ロンドン地金市場協会(LMBA)が公表するフィキシングプライス。LMBAの日本語訳は、ロンドン貴金属市場協会もしくはロンドン地金市場協会。
下記のように常に公表が行われています。
LBMAとは
英国ロンドンの金・銀市場参加者による自主規制団体がロンドン地金市場協会(LBMA)です。
・世界最古の金市場であるロンドン金市場をルーツとする国際的な業界団体。その役割は「ロンドン金市場」「ロンドン銀市場」で流通する金・銀の規格を制定し管理さらに精錬会社や造幣局の登録・認定を行うなど幅広い役目を持っています。
地金商大手の田中貴金属は、2003年12月にLBMAから、金と銀の公認審査会社に任命されています。
◆LBMAメンバーの日本企業は5社(2018年6月)
- アサヒホールディングス:フルメンバー
- 三菱マテリアル:アソシエイト
- 三井物産:アソシエイト
- 住友金属鉱山:アソシエイト
- 田中貴金属グループ:フルメンバー
LBMAの審査に合格して登録・認定された精錬会社は、「GDバー(Good Delivery Bar)」と呼ぶロンドン金市場での受渡適合品を製造できます。このGDバーの刻印は、市場での信頼性が高く、現物の金投資での信頼性を担保してくれます。
GDバーを製造できるGD精錬会社が生産する金製品は、年間産金量の85~90%を占めるとの話があるほど、大きなシェアを持っています。
ロンドン金価格は指標価格
鉱山会社などは長期契約を行う時の価格にこのロンドン・フィキシングを頻繁に使います。
その値決めの方法が公正でフェア。NYや東京の先物市場がほぼ24時間取引されているため、終値を取るにしても一日の中での高値や安値があることからロンドン金価格の値決めが重宝されるのです。
その歴史
記録によるとゴールドフィキシングは第一次世界大戦前から存在したようです。当時は非公式に四社の貴金属商が集まっていました。Mocatta & Goldsmid、Pixley & Abel、Sharps & Wilkins、そしてSamuel Montagu & Co.です。そこで毎日「単一価格」が決められていました。それは第一次世界大戦で中止されましたが、戦後には公式な形で再開されました。1919年9月 12日午前11時にN.M.Rothschild & Sons がポンド建てのゴールド価格を発表したのが最初だったようです。フィキシングの黎明:ブリオンボールド
金本位制が通貨制度の基礎であった時代があるように、金は今以上に重要な価値を持っていました。