世界の超大国「アメリカ」が考えている戦略を金投資を行う方は知っておきましょう!彼らが考えている方向性によって、世界情勢が変化し金価格(地政学と有事の金)に影響を与えます。
戦争や経済危機がなく平和になるかのかそれとも争いが多発するのでしょうか?
少なくともスーパーパワーアメリカの軍事力が内向きになっていることは確かです。
オバマ大統領およびアメリカ人は、もはや自分達の命を賭して外国で戦争を行うことを嫌っています。ベトナム・イラク・アフガニスタンなどの嫌な記憶、実質的な敗北に加えてイラクやアフガニスタンで起きた政府の嘘は大きな精神的ダメージを与えました。
そのため、世界のことには関心を持たないアメリカ人が増えたと言われており、2013年夏に起きたシリアの化学兵器使用問題でも攻撃に必要な国内世論の賛成を得られない結果に終わっています。
目次
オバマ大統領二期目は軍事力よりも内政重視
軍事力を使わない平和主義の傾向が強い政権。
●チャック・へーゲル国防長官(2013年2月26日就任)
上院議員時代にアメリカ軍の海外派兵と駐留に反対との発言を繰り返す。
●ジョン・ケリー国務長官(2013年2月1日就任)
「アメリカが強い国になるには軍事力より国内の政治や社会体制の整備が重要。そのためにも財政赤字の処理をすべき」
「アメリカはこれから軍事力ではなく外交によって国際的立場を維持していく」
オバマ大統領の方針
アメリカ議会は、外国のことより地元経済に重きを置く方針であり、オバマ大統領および与党の民主党は軍事費の削減に同意している。
大統領は、オバマケアに代表されるように軍事費を減らして社会福祉費を増やそうとしており、一方で財政赤字削減のために高額所得者に対する増税の方向です。
これが、与野党対立(政府債務上限問題)の大きな要因になっています。国防・エネルギー重視で小さな政府と自由経済をテーマに置く共和党とは相いれません。
2013年9月10日のテレビ演説で、「米国は世界の警察官ではないとの考えに同意する」と話す。この発言は後世において、米国の戦略転換を示す重要な出来事。
アメリカが内向きになる背景
もう戦争は嫌だということが一点。そして自国が犠牲になっている間に、中国が世界で台頭してきたことことに対する警戒と米国景気が回復しない経済的な理由が二点目です。
さらに、シェールガスと呼ばれるオイルシェールから取り出す石油をアメリカが生産しはじめたことで中東の石油を守る必要がなくなりそうなことも大きな理由です。
国際エネルギー機関(IEA)の世界のエネルギー見通し、米国が2017年までにサウジアラビアを抜き、世界最大の産油国になるとの見方
◆米国の石油生産量
- 2015年までに日量1000万バレル程度に増加
- 2020年には同1110万バレル
- 2035年までには同920万バレルに減少
◆サウジアラビアの生産量
- 2015年まで日量1090万バレル、
- 2020年は同1060万バレル
- 2035年までに同1230万バレルに増加
アメリカ軍の新たな戦略
- アメリカ軍は2014年末までにアフガニスタンから撤兵する予定。2016年は韓国から撤退。
- イランに対して軍事力よりも話し合いで解決を望む。場合によってはイスラエル単独でイラン核兵器阻止に動く。
- 中東やアフリカを守る役目から手を引いていく。
- 対テロ戦争で力を発揮した無人航空機(プレデーターやリーパー)と特殊部隊に力を入れて、従来の地上軍や航空機を減らす方向
- サイバースペースでの戦争「サイバー戦争」に力を入れる。特に対中国に対して警戒。
この戦略転換により、中東およびアジアが混乱していく可能性があります。インドや中国の国民が自国通貨ではなく金投資を選択するのもよく分かります。
イスラエルとイランの対立、中国と周辺諸国の対立、イスラムとユダヤ・キリストの宗教対立と数え上げればきりがないほど紛争の火種はありますから、今年のシリア問題のように金価格が上昇していく余地は大きく、量的緩和縮小スタートで大きく値を下げたところに、金を買うチャンスが来るかもしれません。
核兵器の削減を検討
冷戦時代に作った核兵器を管理し、古いものは修理や廃棄することで新陳代謝を促さなければいけない。
オバマ大統領の命令の元、ジェームス・カートライト大将が2009年に提出した核兵器全廃計画書
- アメリカが保有する核弾頭の数を900に削減
- 戦略爆撃機B2を退役
- 戦術核兵器を全廃
米国だけでなく、他国においても古くなった核兵器をどう管理するかという問題は抱えています。
しかし、米国のオバマ大統領が核兵器全廃を第二期目の大きな目標として出してきた場合に、政治対立や他国がどう動くか注目です。
シリア攻撃問題では威信が低下し、ロシアのプーチン大統領に名をなさしめたと評価されている状態ですから。
米国と中国のアジア戦争:米中戦争
日本と中国が争う尖閣諸島問題や台湾をめぐる争いなど、中国の領土拡大の動きに対してアメリカ軍はどう対抗するのでしょうか。
今、アメリカ最大の仮想敵国は中国です。米国は、中国本土に攻め込む気はほとんどなく、中国海軍および沿岸地域の軍事基地を破壊することを主眼に置いています。
加えて、中国の情報システムや通信システムを破壊することで彼らの侵略をストップしようという考えで、日本および台湾を防衛しようという意志は固いでしょう。台湾を防衛できるかどうか疑問は持たれています。
2016年6月30日、アメリカ軍が韓国から撤兵。
そうなると北朝鮮が韓国へ侵攻するリスクと中国が台湾併合に向かうリスクの二つの危機シナリオが考えられます。
もし、核攻撃が起きたときにはアメリカは全面攻撃に入る作戦を立てているようですが、地上軍を展開する考えはなくて、ミサイル攻撃や無人機での攻撃で弱らせて地上軍の侵攻に対しては当該国に対応を任せることになりそうです。
民間研究機関「大西洋協議会」上級研究員のロジャー・クリフ氏によると日本や台湾を守る必要がないと考える人もオバマ政権内部にはいるとのこと。クリフ氏自身は反対の立場。この件はJBPRESSで紹介されています。
金価格を巡る動きとアメリカ経済の復活
米国の軍事力や威信低下により、小規模~中規模の紛争が増えた場合には、金価格が上昇していきます。一方、米国経済は軍事費負担が減り石油支出が減り逆に石油輸出で稼げることから、競争力回復の可能性が高くなります。
ナチスの台頭を許したイギリスのチェンバレン政権(宥和策wiki)のようになるのか!それとも戦争の無駄を悟り平和策が成功するのでしょうか?
ハンチントン氏の「文明の衝突」を欧米のエリート層は意識しています。
世界政治や経済のリスクを金相場はもっとも早く示します。例えば、FRBの緩和縮小の件も金価格が先取りして下落しています。