リアルタイムの金価格や予想・金投資のノウハウを紹介します。世界で人気の純金積立や投資信託の方法。さらに、今後の見通しを徹底的に解説いたします。

  1. 雑学や歴史
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金銀を新世界から持ち帰ったスペイン黄金帝国が没落した理由

1500年代の大航海時代、中南米を制服したスペインは、大量の金銀をスペインに持ち帰りました。

ハミルトン伯爵やモリノー氏、アットマン氏の研究によれば1492年からの100年間でそれまでの5倍近い金銀が欧州に流入したと言われています。

カリブの海賊が活躍、彼らの主な獲物は中南米からスペイン本国へ輸送される黄金船団でした。その積荷は、金や銀そして赤き染料「コチニール」など欧州で垂涎の貴重品ばかり。

パイレーツオブカリビアン予告編

ところが、黄金帝国「スペイン」は皆様がご存じのとおり世界史に名を留める大帝国にまで発展せずに没落してしまいます。

カリブ海から運ばれた金(ゴールド)はいずこに

運ばれてきた金銀は、一時的にスペイン経済を潤すことになったものの現代の産油国程にスペインを押し上げる力にはなっていません。

金を投資に使うのではなく消費に使ってしまったことが彼らの失敗。

スペイン人は金を浪費する

大量の金銀が輸入されたことでスペイン人は苦労して田畑を耕したり物を作り上げることをしなくなってしまうのです。

ゴールド「金と人間の文明史」によれば、「農民は鍬を捨てて絹をまとい、たこのできた固い手を柔らかい手にしてしまった。・・・商人はお上品ぶって通りを闊歩するようになった」

つまり、スペイン人は金銀を使って、何かの生産手段を手に入れる・作り上げるのではなく、外国のモノを買いこむ浪費に走ってしまったのです。金銀やコチニールと交換に腕輪やガラス製品・服飾品などを輸入することでスペイン人は生産意欲を失いました。

これは古代から現代まで何も変わりません。失敗の典型的な例です。

もし、金銀が永遠に輸入されていればそれでも国が成り立ったのでしょうけど、金の輸入は1610年以降に落ち込み銀も1630年頃から大幅に減少してしまいます。

スペインの都市「セビージャ」

Tathi Sobroza

豊富に入ってくる金を投資に回して生産手段を生み出していればスペインの運命は違っていたかも。

スペイン王国の大きな失敗

さらに彼らは2つの致命的な失敗をします。流入量の多さから金価格は下落し物価は上昇するなかで。

1492年、ユダヤ教徒とイスラム教徒の追放

キリスト教徒による失地回復運動(レコンキスタ)によりイベリア半島最後のイスラム国「グラナダ」が陥落した後、スペイン王フェルナンドとイサベルは異端審問を開始しユダヤ教徒とイスラム教徒をスペインから追放した。

当時のユダヤ・イスラム教徒は商人階級を構成し、金貸し・貿易など経済活動をつかさどっていたために、彼らなしでは国は成り立たない状態だったのです。しかし、統一に燃える王は、ユダヤ人を追放することで借金の帳消しと国の一体感を醸成し、イスラム勢力をイベリア半島から追い出した偉大な王の名声を欲しがりました。

そのため、国際色豊かな商人階級を追放することになり、スペインは教育・商業意識の高い人を失い、さらに地理的な観点からもイベリア半島が欧州の中心から切り離される結果に陥った。


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東回りも西回りもスペインを通る必要がない!

カルロス1世の野望、金を利用しスペインを欧州の覇権国に

神聖ローマ皇帝カール五世=スペイン王カルロス1世は、新大陸から運ばれてくる金を使って、欧州の覇者たらんと野望を燃やします。スペイン王カルロス一世の年表

フランスのフランソワ一世と神聖ローマ皇帝の座を争い、選挙には勝ったものの大量の借金を抱えるに至った。皇帝選挙に使用する懐柔工作資金は、スペイン王国の国家予算5年分とも言われ、「外国人君主と外国人顧問、側近」の統治に反発した諸侯の反乱(コムネロスの反乱)に繋がります。

さらに、カール五世は、フランス国王フランソワ一世との戦争を繰り返した上に、ネーデルランド(オランダ・ベルギー)を占領し息子のフェリペ二世に上手くゆかない統治を任せた。

そして、欧州を圧迫するオスマン帝国との戦いに身を投じキリスト勢力の代表としてイスラム勢力と戦うことになる。

息子のフェリペ二世もイングランドを倒すべく有名な無敵艦隊を派遣したもののアルマダの海戦で敗北。

このカール&フェリペのハプスブルク家支配は、新大陸から集めた金銀を軍事費に投下して欧州の広い地域に渡る大帝国を築くことになったものの、借金漬けとなりスペイン没落の大きな原因となったのです。

カール五世は、在位中の40年間に3700万ドゥカートの負債を作り新大陸から王室に収められる金銀の額を超過。後継者のフェリペ二世は即位してわずか二年1557年にスペインの破産を宣言。1575年には二回目の破産。

スペイン王国は債務不履行を繰り返していき、欧州の覇権国としての地位を失っていきます。太陽の沈まない国、黄金世紀の終焉

軍事行動を支えたのは外国の傭兵が中心であり彼らに支払う給料に金銀をはじめとした新大陸の財宝は消えていき、スペインの発展にはつながらなかったのです。太陽の沈まない国の衰えは、金投資を行う上でも考えさせられる出来事です。

 

日本は資源の少ない国ですが、世界を見ても資源がある国が発展しているとは限りません。

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