すでに対立は内戦・体制崩壊と突き進み、ビクトル・ヤヌコビッチ大統領は追い込まれています。
政変を主導した野党側は、挙国一致内閣の暫定首相候補にアルセニー・ヤツェニュク氏を指名、新内閣は2014年2月27日にスタート。
いきなり、デフォルト寸前の経済立て直し・治安回復・東西に分裂しつつある国内問題の解決・欧州およびロシアとの関係をどうするかと難問を突き付けられた格好。
このウクライナ内戦(政変)を受けてリスクが高まったと市場は判断し金価格は上昇傾向を見せています。
●NY金(ローソク)と東京金(ライン)日足チャート(2014年2月28日)
デモおよび衝突激化によりNY金は1300ドルを突破。東京金も4300円台に上昇中、リスク回避の円高で少し相殺気味。
ウクライナはロシアと欧州の狭間にある国
地図
ロシアと欧州の間という重要な位置を占める国。南端のクリミア半島にあるヤルタは第二次大戦でヤルタ協定を連合国が結んだ地。
しかもロシア主力海軍の一つ、黒海艦隊は、ウクライナ領セヴァストポリを基地に活動しており、ここを失うと黒海から地中海へと抜ける自前の航路を失ってしまいます。
ウクライナを失うことはロシアのプーチン大統領としては許されざる失態にあたるわけです。有事の金でふれた地政学リスクが非常に高い地域がここにある。金投資や株式投資を行っている方にとって情勢が非常に気になります。
ロシア側と欧州側で国家分裂か?
首都キエフを境に、東側はロシアに親近感を抱き、西側は欧州に親近感を抱く。そのため国家分裂の可能性もあります。
出典:ウィキペディア ロシア・ウクライナガス紛争
黒海を失うなんてことになったら・・・
ロシアからの天然ガスはウクライナを通り欧州へと供給。そのパイプラインを通していることもあり市場価格より安い天然ガスをウクライナは得ています。
2013年12月、ロシア国営のガスプロムは、ウクライナに対し、ほぼ三分の一という大幅なガスの値下げに踏み切った。さらに、ロシアは、ウクライナ経済へ150億ドルを注入する。この見返りにロシアが得るものとは…。金融支援とガス価格引き下げ
ここまで大きな援助や支援を貰っており、すでに国家経済としては立ち行かない状態
●経常収支推移は悪い
今回の紛争・内戦も以前より続くこのガス紛争を含めたウクライナが欧州とロシアのどちらの傘下になるかという点が大きく影響しています。
さらに核利権の奪い合いという話まで。
確かに表向きは「ロシアのプーチン政権から支持され、強権政治を続けるヤヌコヴィッチ政権」と「これに対して市民の自由を掲げ、抵抗するウクライナ国民たち」という構図がマスメディアによって描かれてはいる。だが、真相は「核利権の奪い合い」なのであって、これが決着しない限り、ウクライナは今後とも繰り返し「内戦」に陥る構造を抱え続けるというわけなのだ。原田武夫:株式会社原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA)代表取締役
新政権は、親欧州政権ですが、ウクライナの主要貿易相手国を見るとロシアの占める割合が非常に大きい。
(1)輸出 ロシア(29.0%)、トルコ(5.5%)、イタリア(4.4%)
(2)輸入 ロシア(35.3%)、ドイツ(8.3%)、中国(7.6%)(2011年:ウクライナ国家統計局)
天然ガスを安く仕入れられる点もあり、この経済環境でロシアを切り捨てることは難しい選択。
ソチ五輪を終えたロシアは軍事演習を行うなどで圧力をかけている状態。
新首相のアルセニー・ヤツェニュク氏は、「ロシアは隣国であり、われわれはロシアが友好国であるからウクライナに軍事介入することは決してないと固く信じている」とそれしか言えないのでしょうけど希望を口にするのみ。
内戦激化か否か今後のシナリオと金価格
- ロシアが軍事介入し親ロシア政権を打ち立てる
- 新政権が力を持ち国を建てなおす(欧州寄りかロシア寄りかで大きく事態は違う)
- 国民による大統領選挙や国会選挙を行い各国の協力を得て国を立て直す
- 東西に分裂し二国になる
- 内戦が激化する
- ロシアおよび欧米が介入しウクライナを舞台に代理戦争化する
そう簡単にはこの危機、収まらないかもしれません。ロシアが手を引いてウクライナ自身に全てを任せる方法ではロシアの失うものが大きすぎます。また、援助を断ち切って国が立ち行くかかなり疑問。IMFを通じて日本も援助する方向性。
最悪のシナリオは、内戦が激化し欧米対露の対立が深まること。そうなると一気に戦争リスクが高まります。どこまで危険が高まったかは金価格を見ていれば分かります。
本当に危なくなった時には更なる急激な上昇を見せるでしょうし危機が落ち着けば金は下がります。
●首都キエフでは多数の死者が。
●過去の紛争など
2008年:南オセチア紛争:グルジアとの軍事介入
1994-96年:第一次チェチェン紛争:チェチェンへの軍事介入
クリミアで民族対立が高まる:ロイター
ヴィクトル・ヤヌコーヴィチ氏は2014年2月28日17時(モスクワ時)にロシアのロストフ・ナ・ドヌで記者会見を開く。周辺の人物が明らかにした。:VOICE OF RUSSIA
3月2日: ロシアのプーチン大統領は同国に軍事介入する方針を表明し、ウクライナは2日、戦闘準備態勢に入った。
3月21日:ロシアはクリミア自治共和国と特別市を編入手続き完了。「クリミア連邦管区」を創設する大統領令にも署名。
さらにロシアは、クリミアのセバストポリ海軍基地の貸与を受ける見返りに天然ガス代金を割り引く両国合意を破棄し、計160億ドル(約1兆6360億円)の返済をウクライナに求める方針を決めた。サンケイニュース