金・原油・とうもろこしなど国際商品の下落が続き、一部で採算割れが起きはじめています。原油や金は、国際エネルギー機関などが推計した生産コストを割り込む例も出ています。
さらに市況低迷が続けば、鉱山・石油などの資源開発会社は、生産コスト以下の資源を閉じるなど供給を減らす手段を取る可能性があり、安定供給に不安感が生じる事態もありえます。
日経新聞記事の金・銅・原油の生産コスト
2014年11月11日の日経新聞で国際商品の取引価格と平均的な生産コストがまとめられていました。
貴金属価格
現在価格 | 平均生産コスト |
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金:1トロイオンス約1170ドル | 1205ドル (トムソン・ロイター) |
銅:1トン約6600ドル | 7130ドル (パンパシフィック・カッパー) |
●金の生産コストとして1200ドルは以前からの節目。
原油:WTIは1バレル約78ドル
種類 | 平均生産コスト |
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深海油田 | 70~90ドル (国際エネルギー機関) |
シェールオイル | 50~100ドル |
中東・北アフリカ | 10~25ドル |
穀物
テーブルヘッダ1 | コスト |
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とうもろこし 1ブッシェル約3.6ドル |
3.96ドル (米農務省) |
大豆 1ブッシェル約10.4ドル |
10.14ドル |
とうもろこしや大豆は、人間が直接食べるよりも飼料・油・加工食品の用途が多く、世界的な物価に与える影響は大きい。
原油安が世界的なデフレを生み出す可能性
シェールガス開発で、米国は石油輸入国から輸出国へと転換していく動き。そのあおりを受けて世界的に原油価格が下げています。高値になれば、石油の可採埋蔵量は増加し、安くなれば減少する。
ブラジルの国営石油会社ペトロブラスが挑んでいるトゥピ油田をはじめブラジル沖には埋蔵量数十億バレルの油田が眠る。海岸線から300km、水深数千メートルにある巨大油田は、ブラジルを一大産油国に押し上げる可能性を秘めている。
一方で、米国メキシコ湾の原油流出事件のように、事故リスクを抱えており、生産コストが高い。
そのため、原油価格が下落すると採算割れとなるリスクが他油田より強い。このまま原油価格が下落するとブラジル国債からの資金流出が起きる可能性も。
世界の石油をガブ飲みしてきた中国の景気悪化で経済成長率は鈍化しており、需要面は弱まっている。単純に生産増加と需要減少は石油をはじめ金や穀物の価格下落につながる。
これは、日本が陥ったデフレスパイラルの兆候。
●中国の経済成長率推移
2012年に経済成長率8%を割り込みゆるやかにダウンが続く。
米国の量的緩和による資産買い入れ終了や米ドル高で金価格は下落。そして2014年は、原油・銅などの商品市況全体が下落。
アルミニウム・銅などでは、すでに精錬所や鉱山の閉鎖やリストラに追い込まれている。
金投資専門家の予想
金相場は4年半ぶりの安値を付けるなど、下落トレンドが続く。その中で金投資の専門家は先行き予想をどう見ているのか?同じく日経新聞のインタビューから見てみます。
豊島逸夫氏
- 原油安で中東の政府系ファンドがNY市場で金を大量売却
- 世界的なリスク低下で安全資産として金を購入する動きが減った
- 中国の個人投資家は、長期保有から短期売買へと変化
- 中国の個人投資家は欧米市場の金弱気論に反応し金売却を行っている
- 米国の利上げ観測は織り込まれ売り先行の市場は最終局面
- 金価格の下値は1トロイオンス1120ドル位を予想
- 2015年1~3月あたりが底値
野村證券の経済調査部大越龍文氏
- 原油価格の下げで物価上昇圧力が後退し、インフレヘッジとしての金投資が薄れる
- 南アフリカ・豪・カナダで生産コストの高い金鉱山が閉山
- 全体の金生産コストが下がれば金価格の下げ余地はある
- イスラム国やウクライナ情勢は混乱が続くも悪化や有事の認識は薄い
- 中国やインドの需要は鈍く、安値でも買いが入らない。
- OPECが原油の減産を決めなければ金相場は1トロイオンス1070~1080ドルに下がる可能性あり