中国経済の悪化が世界経済を不安に陥れています。2015年の7月以降、中国上海株式市場が崩れはじめており、8月にその動きが再燃。8月24日は、円・ユーロポジションの巻き戻し、原油価格下落などが大きく進行。
金価格も7月下旬に1トロイオンス1100ドルを割り込んだ後は、上昇傾向が続いています。
中国経済のハードランディングで金投資の行方は?
かなり、中国経済の減速は嫌気されており、上海株式市場は急落。
●上海A株指数は、今年上昇した分をほぼ失う。上昇で稼ぎ、上手く売り逃れたのは誰?
出典:ブルームバーグ
インドと同様に、金投資が盛んな中国は、習近平政権が「倹約令」を出しており、奢侈品(しゃしひん)の贈答禁止でゴールドの需要は減少。この度の株価下落も宝飾品・ぜいたく品としての貴金属投資を押し下げる傾向。 また、経済成長率は7%を維持してはいるが、数字に対する不安感・借金経済により膨れ上がった不動産バブル崩壊によるハードランディング懸念が大きい。
米国の利上げ状況
2013年5月22日QE縮小に向けて始動をはじめたバーナンキFRB議長。それを先取りしたキプロス中銀の金売却をきっかけに、長きに渡った金価格の上昇トレンドは終焉。
そして、米国の利上げは、バーナンキ氏の後任、イエレン議長の手によって計画を実行中。2015年中に一度は利上げを行うスケジュールを立てており、9月が有力視されていました。ところが、中国景気の悪化による世界経済不安が生じたことで、利上げ意欲が後退しています。米国の利上げは、米ドル上昇金価格下落要因。
イラン核合意
2015年7月14日に締結された核合意は、米国の対イラン政策において歴史的な方向転換。中東の大国イランとの経済関係が強まれば、世界経済には大きなプラス。一方、イスラエルや米国の共和党右派の反発。イスラム国=ISISの攻勢がどうなるのか今後のシナリオは読みにくい。
イラン核合意の正式名称は、「包括的合同行動計画(Joint Comprehensive Plan of Action:JCPOA)」。イランと米国を筆頭とする6カ国(国連安保理常任理事国5カ国プラス・ドイツ)。
イランはその核関連活動を大幅に縮小し、米国側は、イランに対する制裁を大幅に緩和するという内容。つまり、米国側は、イラン市場を手に入れてビジネスを行うことができるようになる。そしてイラン側は原油販売ルートを手に入れることに。しかし、イラン・イスラム革命は変化、イラン産石油が市場に放出されることで原油価格の下落は、湾岸産油国やロシアを刺激することになる。
原油価格の下落
EVOCXチャート
実際、すでに原油価格は下落。8月24日にWTI原油は、1バレル37.75ドルの安値を付けた。これは、世界経済にデフレを呼び起こしロシアなど産油国を追い詰めることになりかねない。
有事リスクは増している
- 勢力を拡大するISIS
- 経済悪化する中国
- 原油価格下落によるデフレ懸念
- 米国利上げの遅れ
- ギリシャなどユーロ危機
- 産油国の経済悪化
- 新興国危機
- 北朝鮮の政治経済
イアン・ブレマー氏の2015年世界10大リスクで予想されていたように、今年前半ののんびりムードに対し、後半は有事リスクが高まっている。
●NY金の日足チャート推移
EVOCXチャート
実際、中国経済の悪化を受けて、NY金価格は上昇傾向。1100ドル割れから1150ドル越えまで上がってきています。
生産コスト面からも、限界に近づいている金供給を考慮すると、底値は購入チャンス。
もし、世界の中央銀行が、現在の危機を脱するために、カネ余り・供給路線を継続拡大するならば、金投資家にとってプラス。有事の金再燃の可能性もありますね。
逆に下落要因は、やはり米国の利上げによるドル買い、一方、国内要因としてはリスクオフによる円高が進行すれば、為替換算による国内金価格下落が値下がり要因として存在。