EU離脱を巡る動きは少しだけ落ち着きを見せており、今週は、米雇用統計及び米国の利上げ問題に焦点が当たる週になりそう。先週は、市場全体がリスクオフに傾きすぎた反動で、金相場は一時、1308.2ドルまで値を下げるも週末にかけて上昇を見せて、1339ドルで引けた。
金価格を巡る動きを見ても、EU離脱に関する影響は、今後も出てくると予想できる。英国からのスコットランド独立やEUからの離脱国が出てくる可能性・ドイツの対応など不確定要素は大きい。製造業や金融業の一部がロンドンから離れた場合、英国の戦略はどうなるのかも興味深いところ。
英国の株価は金価格上昇・ポンド安でEU離脱派勝利前よりも大幅上昇
世界各国の株式相場は全般的に上昇。出遅れているのは、日本とドイツ。
●株式指数:GMOクリック証券CFD 2016年7月1日
興味深いのは、英国の株式が大幅上昇していること。これは、英ポンド安と金相場をはじめとした商品相場の上昇が株価に好影響を与えた結果。
産金会社など鉱業関係の株価が大きく上昇。ウォールストリートジャーナルによると、産金会社「ランドゴールド」は、23日から26.69%上昇。ランドゴールドは、アフリカを中心に貴金属の採掘・調査を手掛ける会社
最も大きく株価を上げた3社はいずれも鉱業関連で、産金のランドゴールド・リソーシズ、金銀大手フレスニーヨ、貴金属のパン・アフリカン・リソーシズだった。英国のEU離脱で貴金属価格が急騰したことが株価上昇の要因になったと考えられる。
英ポンド安・英中銀の利下げ示唆・金価格上昇が英株上昇につながり、逆にドイツ株が振るわないことは、EU離脱派にとっての追い風になりそう。マスコミには、良識派・リベラル派・グローバル派が多いことから、EU離脱派が攻撃されてEU残留派が支援されることが多い。しかし、マーケットで戦う場合は、この両派の争いに対して中立でいることが大切であることを忘れないようにしたい。
今週の金相場は米国に焦点が当たる
今週は、7月6日にFOMC議事録(6月14・15日開催)8日に6月米国雇用統計があるため、米国に注目が集まる。英国のEU離脱についての影響、5月に大きく悪化した雇用統計の回復具合を見る週となる。
現状、米国の利上げ確率は大きく後退しており、年内利上げすら危うくなっている。さらにEU離脱問題で、ユーロ/ドルは、ドル高に傾いており、ドル高が米経済に与えるダメージも検証しなければいけないことから、夏から秋の利上げは遠のくでしょう。
私も年内利上げは難しいのではと考えています。これは、NY金価格には強い上昇要因。
6月28日にパウエル理事が、世界的なリスクは一段と下向きになったとの発言を行っており、問題は拡大しそう。一方、このところの市場混乱の一因は中央銀行の緩和政策に手詰まり感があることが大きい。
つまり、現在の状況に対して、中銀の打つ手は限られている。結局、どの中央銀行も緩和策に頼ることになり、緩和余地の大きい国で株価が上昇していると考えられる。日本やドイツは緩和余地が小さく、米英は緩和余地が大きい。
先週の調整場面で、金価格の調整額が小さかったことからも、今後の金価格は上向き余地があると予想しています。
●NY金価格の日足チャート:EVOCX
上昇トレンドを描くも、一目の雲は薄くねじれている状況。米雇用統計で良い数字が出ると、米ドル上昇金価格下落が起きる可能性もあるので、米経済指標関係には注意しておきたい。
●東京金価格の日足チャート
一目均衡表の遅行線が実線を抜いており上昇トレンドの傾向。実線・遅行線ともに雲の頭がレジスタンス。ここを抜ければ、上に向かう可能性がある。NY金価格と為替相場の両方に注意しておきましょう。
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