2017年6月5日に衝撃のニュースが飛び込んできました。サウジアラビア・エジプト・UAE・バーレーンの4か国が、テロを支援しているとの理由でカタールと断交しました。イエメンやモルディブも追随。
原油価格や金価格は上昇。ただし、原油価格は、その後にすぐ下落しました。断交がテロや戦争に繋がるかどうか注目しましょう。
●金・原油・天然ガス・白金の1時間足チャート 2017年6/6 11:35
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中東4か国とカタールの断交
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BBCの報道では、サウジアラビアはカタールとの国境を封鎖し陸海空の交通全てを断絶。バーレーンやエジプトも同じく交通を断絶。UAEは、カタールの外交官に48時間以内の国外退去を求めた。
UAEやサウジアラビア政府の説明では、カタールは、テロ・過激組織を資金提供・受け入れなどで支援。アルカイダ・イスラム国・イエメンの反政府勢力「フーシ派」などを支援していると指摘。カタールをイエメン政府の反政府勢力との戦い支援の有志連合から排除。
5月にトランプ大統領が中東諸国を訪問しており、サウジアラビアのリヤドで、イスラム諸国向けのスピーチを行っています。サウジアラビアを称え、テロリズムの根絶を訴える内容でした。テロ被害者の95%以上がムスリムであるとの見方も紹介し、若いイスラム教徒を恐怖から解放すると述べています。
テロリスト・ファイナンシング・ターゲティング・センターと呼ぶテロ資金の調達を防ぐ合意に署名。イランへの強烈な非難を込めたメッセージを発信。つまり、今回の中東諸国が断交は、テロ組織を支援するカタールに対して、米国と合意の上での処置だったことが想像できるでしょう。
カタールという国
カタールは、湾岸協力会議(GCC)のメンバー(サウジ・UAE・クウェート・バーレーン・オマーン)。本来は、サウジやUAEと足並みをそろえて、イランやイスラエルに対抗する国だったはず。それが今回のような事態になったため、中東諸国の政治・経済そして石油・天然ガスをはじめとした資源価格に大きな影響を与える可能性があります。
カタールは、ドーハの悲劇(サッカーワールドカップ予選)で、日本での知名度が高い国・都市。2015年の一人当たりGDPは、世界第三位の約7万6576ドルと裕福な国。石油・天然ガスという資源を背景に力を持っています。
日本の天然ガスも約15%がカタールからの輸入。原油埋蔵量の世界シェアは約1.5%、天然ガスは13.1%(2014年外務省)とのことで、原油よりも天然ガスへの影響が強いでしょう。
2022年サッカーワールドカップの開催国にも選ばれており、情勢次第では、開催国が変わるかもしれません。もともと、開催国選定において、不正と賄賂が横行したと叫ばれており、サッカーを行う環境(特に暑さ)を解決できるかどうか疑問視されていました。
カタールは地理的にサウジアラビア・UAEとの関係が悪化すると厳しい。食料品などの生活必需品を両国に依存しており、兵糧攻めに等しいとの意見も出ています。すでに、カタールのスーパーでは、食料品の大量買い占めが起きている様子。
また、ペルシャ湾を睨むカタールには、米軍のアル・ウディド空軍基地があり、米軍が駐留しています。グーグルマップで見ると、砂漠の真ん中に基地があることが分かりますね。対岸はイランですし、完全に四方を敵に回してしまった感が否めません。
カタールと周辺国の関係は以前より悪化していたとの報道も出ています。
カタールが中東諸国の・断交・反感を買った理由
- アルジャジーラでアラブの民主化運動に好意的な報道
- パレスチナのハマスやエジプトのムスリム同胞団を支援
- イスラム国やイエメンのフーシ派を支援
- アミール首相が、イランは地理・宗教的に重要で無視できない。敵視するのは愚かと発言(ハッカーの仕業?)
アミール首相の発言が、5/23に流れたことがきっかけとも言われていますが、数年前からカタールと周辺諸国の間は悪化していた様子。
ニューズウィークの記事によるとカタールのタミム首長は、自国の富を利用した独自戦略を取っていたとのこと。
- アラブの春が起きたときに反対制運動側を支持
- サウジなどスンニ派諸国とイランのシーア派が対立する中でイランに接近
- 中東の香港になろうとした。サウジに対する反発及び独自路線の首長
日本イスラム連盟のサイトでは、カタールとサウジアラビアの関係悪化が記事になっています。2012年1月の記事では、こんな内容が・・・
カタールのシェイク・ハムド・ビン・ジャーシム・アルサーニ首相が、サウジアラビアの軍隊は腑抜けであり恐れるに足りない、サウジアラビアのアブドッラー国王は、老齢化しすぎている、サウジアラビアの体制はカタールによって、非常に近い将来打倒される、サウジアラビアのアルカテイ-フの住民は、カタール軍が侵攻占領することによって救われる、といった過激な発言をしている。カタールとサウジアラビアの関係悪化
こんなことを言っていては、反感を買うのも当たり前。更に、カタールにできたモスクの名前が、ムハンマド・イブン・アブドルワッハーブ、サウジの国教「ワッハーブ派」の名前です。そして、ムスリム同胞団の大物「カルダーウイ師」を長らくかくまっているのがカタール。彼は、60年以上もカタールに住んでいます。彼は、2014年に下記の発言でUAEを怒らせています。
カルダーウイ師は『アラブ首長国連邦政府はイスラム体制に反対の立場をとっている、アラブ首長国連邦はアラブ首長国連邦国民人エジプト人を30人投獄した。』と非難したのだ。このことに怒ったアラブ首長国連邦政府は、同国に駐在のファーリス・アルヌアイミ・カタール大使を呼び、厳重に抗議した。抗議は外務担当のアヌワル・カルカーシュ大臣によって抗議書簡が、カタール大使に手渡された。『カルダーウイ発言でカタールUAE関係悪化』
カタールが強気になった理由は、米国の空軍基地がサウジからカタールに移転したこと。地域最大の大国サウジアラビアに対する対抗意識や歴史的経緯からの反発もある様子。最近のカタールは、前述のサッカーワールドカップの招致成功にあるように経済的な成功を見せています。その点がサウジの反感を買ったことも理由の一つかも。
繁栄を謳歌していたクウェートが、イランイラク戦争で疲弊したイラクの怒りと妬みを買い、攻め込まれたことを意識します。
私達にとって、中東のニュースは情報量が少なく、今回のカタールと中東諸国の断交は寝耳に水の方も多いでしょう。しかし、数年前から、それは起きていたということです。
- トランプ大統領のサウジアラビアでのスピ―チ:強烈にイランを攻撃しており、今回の断交は、対イラン・対イスラム国を中心にしたテロ組織との戦いが主眼。このトランプ演説、あまり報道されていませんが、重要な内容を含んでいると思います。
- カタールが中東から断交:広瀬隆雄氏の記事
- カタール:ウィキペディア
また、断交を受けて、トルコが仲介に乗り出していることも注目したいニュース。普通に考えるとカタールは米国に仲介を求め、テロ支援を止めることを条件にサウジを中心とした諸国と仲直りするというシナリオが有力ではないかと。ラマダン中にいくつかテロ事件がすでに起きています。テロには、断固とした態度で臨む・ISを壊滅させるというトランプ政権の公約の一環なのかもしれません。
サウジアラビア側は、カタールでの軍事クーデーターが起きることを期待しているとの話もあります。
中東には、イスラエル・イラン・イスラム国とすでに役者はそろっているかと思っていましたが、カタールが登場してくるとはびっくりでした。今後の中東情勢がどう転ぶか次第で、金価格にも影響が出てきますから、落ち着きどころがどうなるか見てみます。
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