近年の環境問題は激しさを増しており、自動車業界は、従来の有人・ガソリン&ディーゼルから自動運転・電気自動車への過渡期にあります。
そうなると、排ガス処理の触媒として使用されているプラチナ・パラジウムの需給&価格に影響を与えることになります。
欧州で相次ぐガソリン・ディーゼル自動車から次世代車への切り替え
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地球温暖化防止のため、そして相次ぐ自動車メーカーの不正を受けて、自動車業界に変化が起きようとしています。
1.ドイツ連邦議会は2030年までにディーゼル・ガソリン自動車を禁止する決議を採択。こちらは法的拘束力のない政府への提案。
2.イギリスは2040年からガソリン&ディーゼル車の販売を禁止する方向
3.フランスのマクロン政権は、2040年までにガソリンとディーゼル車の販売を禁止
4.ボルボは2019年以降の車は電気自動車かハイブリッドカーのみにする
パリ協定からアメリカが脱退するものの欧州を中心に持続的な環境維持への関心は高いまま。フランスの決定もパリ協定の目標達成&相次ぐディーゼル車の不正や技術的な限界を感じて、環境維持に全力を挙げる意志の表明でしょう。
上手く行けば、欧州の自動車メーカーは電気&ハイブリッドで主導権を得る可能性があります。
電気自動車がプラチナ・パラジウムに与える影響
プラチナは、金投資と同様に宝飾品・貴金属としての価値を持ちます。ところが、同じ白金族ながらパラジウムは、工業用途がほとんど。そのため、現在のパラダイムシフトは、長期的な白金&パラジウム価格の下落要因になるでしょう。目先の何年かには大きな影響を与えないと思います。
原油価格も代替エネルギーが開発されていくことで、価格下落のリスクがありと指摘されています。それを見越してサウジアラビアなどの中東諸国は動いている様子。
- プラチナの需要の約40%が自動車触媒:ディーゼル車がメイン
- パラジウムの需要は約70%が自動車触媒:ガソリン車がメイン
ガソリン・ディーゼル車の排ガスには、様々な有害物質が含まれていて、プラチナ・パラジウムは、それを取り除く触媒として利用されています。
ただし、ガソリン&ディーゼルにとってかわる次世代自動車がどうなるかによっても大きく需要は変化します。
EV(電気自動車)になるのかFCV(燃料電池車)になるかで、プラチナの使用量が大きく異なり、場合によっては、両金属の需要が増大する可能性すらあるとの指摘もあるのです。
FCVはガソリン車に比べ、大量のプラチナを消費する。プラチナの使用量はガソリン車1台当たり3〜7グラム程度、FCVでは30〜50グラム程度といわれており、ざっと5倍から10倍の消費量となる。燃料電池の電極用の触媒には主にプラチナが用いられているが、パラジウムも利用できる。また、パラジウムは水素吸蔵合金にも利用されており、自身の体積の約1000倍の水素を吸収できるといわれている。水素の運搬・貯蔵においてもパラジウムは重要な役割を担っている。
- EV:電気自動車のことで、電気を電力源としてモーターで走行。走行時のCO2排出量はゼロ。ただし、発電所での発電方法次第で環境に負荷あり。プリウスが代表。
- HV:ハイブリッドカー。ガソリンエンジンと電気モーターの組み合わせで動く車。テスラ・モーターズが有名。
- FCV:燃料電池車。水素と酸素を化学反応させて発電する燃料電池を使ってモーターで走ります。上手く成功すれば、大きく環境負荷を下げる可能性があります。トヨタのミライが代表。
テスラを率いるイーロン・マスクは、スティーブ・ジョブス氏に匹敵するとも言われる企業家で、火星旅行・移住などの計画を幾つも持っている人物。くしくもプラチナの産地である南アフリカ出身。
電気自動車は、充電・航続距離・充電池の寿命といった大きな問題を抱えています。FCVは燃料電池の安全性や水素ステーションの整備など。
そのため、現状のガソリン・ディーゼル車が本当に次世代車に代替できるかはまだ分かりません。米国のトランプ大統領のように地球温暖化懐疑派がいることも確かです。中途半端な電気自動車だと新たな製造費や発電所での発電コストを考慮すると環境への負荷は高いという話もあります。
ただ、地球温暖化以前に、地球の人口増加による水・食料・エネルギー不足はすでに顕在化しています。世界各地で淡水と緑は失われており、このままでは人口爆発に飲み込まれてしまいます。そのため、自動車の排ガス・環境負荷に変化をもたらさなければいけないと思います。
プラチナ・パラジウムの需要は、代替技術の動向次第で大きく変わります。その点を考えると、長期的な資産運用・投資に向くのは、やはりゴールドに軍配が上がると思います。
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