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サウジアラビア王家の後継者争い&イランとの対立が金価格に影響!

中東の大国、サウジアラビアが激しく揺れ動いており、金価格にも影響を与えるでしょう。アラブの春で各国の政権が揺らぐ中で、サウド家を国王とする絶対王政ゆえに二つの問題が生じています。その二つはイランとの対立及び現国王の後継者争い。

中東の覇権をめぐるイランとの対立

イスラム教の主導権と中東の覇権をめぐるイランとサウジアラビアは、対立が激化しており、各地で二国の代理戦争とも呼ぶべき戦いが起きています。

●サウジアラビアは、イスラム教の聖地としてメッカ・マディーナを国内に有すイスラム教スンニ派の王国(ワッハーブ派)。

●イランは、ペルシャとも呼ぶ地域大国で、1979年の革命で王国を打倒。イスラム教シーア派を国教とする宗教指導者が最高権力をもつイスラム共和制国家。

両国は、【宗教・政治形態】の二点で相容れにくい大国。サウジアラビアは、イランのシーア派に対する反発と王政打倒のイスラム革命やアラブの春を恐れる二つの理由でイランと敵対中。

報道・ニュースでの解説は、スンニ派対シーア派の対立ながら、サウジアラビア政府にとって重要なことは王政の維持であることを忘れてはいけません。

サウジアラビアのイラン包囲網

世界のイスラム教徒はスンニ派が8割で、シーア派は1割強

●シーア派は、ムハンマドの養子&娘婿だったアリーとその子孫を指導者として認める教義。イラン・イラク・バーレーンでは、シーア派の人口が多い。

●スンニ派は、ムハンマドの後継者としてアリー以外のカリフも認めており、ムハンマド以来の慣習(スンニ)に従う者という意味がある。

この対立軸が激化したのが、9.11テロ事件・シェール革命・イスラム国の台頭の3つ。

サウジアラビアは、米国の同盟国・原油を握る中東一の大国。ところが、9.11テロ事件の首謀者、アルカイダのビンラディン及び実行犯の多くがサウジアラビア人だったことで懐疑的な目で見られることが増えました。

その後、米国でシェール革命が起きて、中東の原油の必要性が薄れたことも、その方向性に拍車をかけています。

一方、これまでは、イラクをはじめとしたイランと直接的に対峙していた国が、米国をはじめとする多国籍軍の攻撃とイスラム国の台頭でボロボロになり力を失いました。

サウジアラビアは、欧米の影響力を一部失った上で、ライバルのイランと対峙することになったのです。とはいえ、サウジアラビアはこれまで同様、直接、イランと戦うことは行いません。現状は代理戦争の立場を堅持しています。その代理戦争は、シリア・イラクそしてレバノンやイエメンに拡大。イスラム国こそ衰退しつつあるものの次はレバノン・イエメンでの紛争が激化していきそう。しかもイスラム国と戦う勢力がシリア政府・クルド人組織など様々な勢力の割拠であるように、中東の各国は、まるで日本の戦国時代のような群雄割拠。

イエメンでは、国内の混乱で難民が大勢生じています。シーア派の武装組織「フーシ派」は、首都を占領しており、サウジアラビアの首都リヤドにミサイルを飛ばすなど勢いを増しています。しかもサウジに飛ばしたミサイルは北朝鮮から購入したものとの報道。報復としてサウジアラビアはイエメンの首都サヌアの国防省を空爆。

レバノンは、イスラム革命を目指すヒズボラが活躍している国。イランの支援を受けてイスラエルをも攻撃するなど著名な武装組織。そして、11月5日にサウジアラビアの傀儡だったレバノンのハリリ首相が辞任。サウジアラビアは、レバノン政府にヒズボラと戦うことを指令する立場。

このように、レバノン・イエメンで激化するサウジアラビアとイランの対立が激化していけば、原油及び金価格への上昇圧力が生じます。

紛争の当事者としては、「アラブの春」による民主化運動で権力を放棄したサーレハ前大統領、サーレハ政権を継承したハーディー暫定大統領(国際的には正統な政権とみなされており、サウジアラビアも支援していますが必ずしも影響力は大きくありません)、サーレハ時代から反政府勢力として伸張して現在首都サナアを実質的に支配しているホーシー派と呼ばれる宗教勢力、南部イエメンの独立を目指すヒラーク運動などが主なアクターですが、それ以外に権力の空白をついて「アラビア半島のアルカーイダ(AQAP)」さらには、イスラーム国系の勢力も国土の一部をコントロールしているといわれています。イエメンの紛争:ジェトロ

そして、新たにサウジアラビアで起きているのが後継者争い

サウジアラビアの後継者争い

サウジアラビア王家では、初代国王「イブン・サウード」の息子達が、2代~6代の王位を継いできました。現在のサルマーン国王は25番目の息子で、先日、来日したことも記憶に新しいと思います。そして、現国王は、息子のムハンマド・ビン・サルマン皇太子への権力移譲を進めています。

元々、皇太子は、ムハンマド・ビン・ナエフ皇太子だったのですが、権力闘争の結果、2017年の7月20日にサルマン皇太子への交代が命じられました。ナエフ氏は、親米派の人物で米国のテロ戦争をサウジ側の中心人物として遂行してきました。健康問題として、アルカイダの工作員による自爆テロによって体内に爆弾のかけらが残っており、痛みが激しいという話をロイターが報道しています。しかし、同記事内で、それは表向きの理由であると主張されており、その後の経過を見ると権力争いであることが明らか。

鎮痛剤の乱用によって判断力が落ちている、というのが解任の理由だった。「国王がナエフ氏との謁見場所に来て、室内には彼ら2人だけが残った。国王はナエフ氏に『退任を希望する。薬物中毒が判断力に危険な影響を及ぼしており、その治療を勧められても聞き入れなかった』と告げた」とこの関係筋は語る。ナエフ皇太子の交代

そして、2017年11月5日、アルワリード・ビン・タラル王子やミテブ王子などの有力な王子たち数十人が逮捕。ムハンマド皇太子を長とする反腐敗最高委員会を立ち上げて権力の完全掌握に乗り出しました。アルワリード王子はシティグループやツイッターの大株主(推定資産は、約190億ドル)。サウジ株式相場では、アルワリード王子のキングダム・ホールディングの株価が大暴落。ブルームバーグは、凍結された個人資産は約330億ドルとも報道しており、米国の税制改革の遅れと共に株式市場の調整&金価格の維持に一役買っています。

拘束された有力者にはファキーフ経済計画相や国営石油会社サウジアラムコの取締役であるイブラヒム・アッサーフ元財務相、元リヤド州知事らが含まれる。また、建設大手ビンラディン・グループのバクル・ビンラディン会長やテレビ局MBCの所有者であるアルワリード・イブラヒム氏も拘束された。サウジの王族拘束

サウジアラビア王家内部の主導権争い

サウジアラビアの混乱及び米国の税制改革問題で、NY金価格は高値維持も日米株価は調整入り。

◆GMOクリック証券の日足チャート 2017年11月15日

金価格は高値維持で株価は調整

北朝鮮リスクも心配なところですが。

ナイーフ皇太子は、米国とのつながりが強く、従来の対米従属をメインとする政治家。それに対してムハンマド皇太子は、米国離れによる地域覇権国を目指している様子。

サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコのIPO・ビジョン2030と言われる新たな経済政策を進めているのもムハンマド皇太子。イランとの対立を深めているのも彼の動き。

つまり、親子関係だけではなく、サウジアラビアという国が、今後、どのような方向に向かっていくのかという国家の行く末までを睨んだ権力闘争が起きていると言えるでしょう。

石油依存型経済から脱却し、投資収益に基づく国家を建設していくことを強調した。発表された同計画における目標は以下の表のとおりである。また、これらの目標を達成するための手段として、国営石油会社サウジアラムコの5%未満の新規株式公開(IPO)、民営化による透明性の向上と汚職抑制、軍事産業の育成による国内調達の軍装備品支出の割合を50%まで拡大、外国人による長期的な労働・滞在を可能するグリーンカード制度の5年以内の導入などがあわせて発表された。中東調査会

田中宇氏の記事によるとアラムコ上場は、対米従属から回避するための作戦。

サウジは王政だが独裁的でなく、総勢3万人といわれる王族たちが合従連衡して構成する雑多な勢力が、国王や執政担当者(今は副皇太子と皇太子)に圧力をかけて政治を動かす実質的な合議制が続いてきた。王室内の諸派の中には、米国の軍産や石油業界、金融界とつながった勢力が多い。サルマン親子は「米国に楯突いて原油安を続けるから財政難になる。対米従属に戻れ」と言ってくる諸勢力の批判をかわすため、アラムコの株式上場を計画している。

サルマン親子が権力を握り続ける限り、サウジは米国が金融崩壊を起こすまで原油安を続ける。逆に、ナイーフが皇太子の座を守って国王になり、サルマン親子から権力を奪取したら、サウジは減産して原油相場を再上昇させ、米国のシェール産業と金融システムを救うだろう。田中宇:サウジアラビア王家の内紛

米国で起きたシェール革命をサウジアラビアが原油安で押しつぶそうとしたのは、昨年の話。その作戦は、ベネズエラ・ロシアなど他の産油国がギブアップすることでとん挫。シェール業界とは痛み分けの結果に終りました。現在は、産油国の減産の元でサウジアラムコIPOまでは原油価格を維持する方向に傾いている様子。

このサウジアラビアとイランの対立は、サウジ王家の権力争いも絡み、金相場の価格を維持する要因になっています。

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