リアルタイムの金価格や予想・金投資のノウハウを紹介します。世界で人気の純金積立や投資信託の方法。さらに、今後の見通しを徹底的に解説いたします。

  1. ファンダメンタル及び中銀
  2. 78 view

貿易戦争リスク激化と赤字削減策はこれ!:米中で500億ドルの関税強化で金価格は下落。

トランプ米大統領が、中国に対して関税をかけるとし、中国もこれに対抗したことから、株価・金価格・原油などが大幅に下落。

安全資産としての金投資よりも、貿易戦争の激化による中国及び世界経済への懸念・資源への需要減少を恐れる動きで、金相場にも売りが殺到して、大きく下げ、1278.8ドルで週末を迎えました。

米中貿易戦争激化で、金価格は大幅に下落

●NY金価格の日足チャート 2018年6月17日

NY金価格の日足チャート

GMOクリック証券のCFD

米中の貿易戦争激化

トランプ米大統領は、中国からの総額500億ドルの知的財産権・ハイテク製品に対する25%の輸入関税をかけると明らかに。それに対して、中国は、米国からの輸入500億ドルに関税を課すと公表。

米中の関税引き上げにより、貿易戦争懸念が強まっています。

6月15日に続き、18日には、2000億米ドル規模の輸入品に10%の追加関税を課すると伝えており、上海総合指数は、大台の3000を割れました。

●中国の輸入関税

  • 農作物と自動車:340億ドル相当
  • 石炭や石油:160億ドル相当

この中国の関税は、トランプ政権の支持層である農業・自動車産業・エネルギー産業を狙い撃ちしており、米国民の側から関税取り下げの声を上げさせることを目的にしています。

これに対して、トランプ政権が引き下がるとは思えず、交渉進展までに軋轢が強まるでしょう。ただし、北朝鮮問題でも明らかになったように、強硬手段を打ち出した後に、先方が折れるのを待つのがトランプ流。

米国の対中国輸入額は、中国への輸出額の約4倍。つまり、関税引き上げ・貿易戦争は、中国側のダメージの方が大きい。かつ、米国側は、中国から買わなくても他国及び自国の生産を増やすことができます。それに対して、中国は、米国という一大市場を失うことのダメージは大。

それゆえに、米国は、中国が折れてくるのを待つ戦術。

◆米国の対中貿易額:外務省

米国の対中貿易額

少し古めのデータですが、米国の対中貿易額・・・このアンバランスさを見れば、トランプ大統領でなくても修正へと動かざるを得ません。トランプ大統領だから、貿易戦争が起きているのではなく、構造的な問題です。

◆2017年の米国貿易収支は、さらに拡大して、対中赤字が約3371億ドル。全体の赤字は約5660億ドル。

その数字からは、中国に対米貿易黒字の1000億ドル削減を求めるのはおかしな話ではないと言えます。数字上の話であり、実際に実現可能かどうかは別ですけどね。日本に、米国車を買え!とゴリ押しされたものの、日本国内にマッチした米国車がなかった時代を思い出せばわかります。

この対中貿易額を解消するための方法はいくつかあり、おそらく、それらを複合して行うことになるのでしょう。日米貿易摩擦の状況を見ても、中国が米国製品を大量に購入するという施策が簡単に成功するとは思えません。

米国の対中貿易赤字削減するための解決策

  • 中国が内需を拡大して、米国製品を大量に購入する⇒日米貿易摩擦で、散々、言われたものの難しかった
  • 為替相場を人民元高米ドル安に誘導⇒過度な米ドル安は、米国の赤字を穴埋めする外国からの投資を失うことになる
  • インドをはじめとした他の新興国からの輸入に振り返る⇒日本が、中国に工場の座を奪われたのと同じ
  • 米国国内での生産を増やす⇒米国企業は、外国での生産から自国での生産に切り替え
  • 中国企業が、米国内に工場を作り現地生産を増やす⇒日本もこの手段を取りましたね

これらの解決策を、実行していくことで、膨大な貿易赤字を削減していくことになると思います。もちろん、これには、かなりの時間がかかりますし、その間は貿易戦争という言葉が、ニュースの一面を飾る機会が多いと思います。

そして、最悪のシナリオは、巨額な貿易黒字を削減していく過程で、世界経済における地位を低下させていった日本と同じ道を歩みたくないと中国側が考えた時。日本は、米国の圧力に屈して、工場を米国や中国に移転させました。その結果、日本国内の産業は空洞化しました。中国が東南アジアやインドにシェアを奪われるのを良しとせず、米国への工場移転も拒否し、新たな市場として、欧州・アジア・中南米・アフリカへの販売を増やす道を選べば、米中の利害が真っ向から衝突して、紛争・戦争リスクが拡大します。

それが、最悪の有事シナリオで、その場合は、金価格が大幅に上昇することになるでしょう。

中国が米国から買う製品・サービスは、ソフトウェア

では、中国は米国から何を買えばいいのでしょうか?

それが、冒頭にも出てきた知的財産権。昔の日本は、マイクロソフトのOSウィンドウズを1台だけ購入して、使いまわした会社はたくさんあります。

中国で、正式な許可なく利用しているマイクロソフトやアドビのフォトショップは大量に存在しているはず。また、大手企業でもオラクルのDBの不正利用もあるはず。

それらの製品やセールスフォース・グーグル・ツイッターといったIT企業のサービスを利用することが、貿易赤字削減に有効な手段。

ビジネス・ソフトウェア・アライアンスの2016年データでは、中国で利用されているソフトウェアの70%が無許可で、被害額は推定約90億ドル。違法コピーや類似製品を止めれば、貿易赤字削減に効果があるでしょう。

つまり、米中貿易戦争が上手く解決に向かえば、米国のIT産業の売上が大幅に上がる可能性があります。そのため、米経済の好調はもう少し続くかもしれません。

◆NY金価格の週足チャート

NY金価格の週足チャート

平均足は、週足・日足ともに下落。FOMCでの利上げ決定、年4回の利上げモードに変化したため、直近のNY金価格は下落トレンドが続く可能性あり。1250ドルや1200ドルに下がるリスクを覚悟しておきたい。2019年~2020年の景気後退サイクルによる緩和再開までは、弱気トレンドモード。

◆金価格(円建て)XAU/JPYの日足チャート

金価格の日足チャート

平均足は、米中の関税問題で、大幅な下落へと転換。DMIも売りへと変化。日米金利差拡大による円安への動きによる金相場との相殺が気になるところ。

ECBの金利は、ECB理事会で現状維持が続くことを公表し、米欧金利差拡大からのユーロ安ドル高に動けば、米ドル高円安に動く可能性があるところも気を付けたい。

 

■来週の注目スケジュール
6月18日(月):日貿易収支、トルコ失業率など
6月19日(火):メルカリが東証マザーズに新規上場、欧経常収支、米住宅着工件数など
6月20日(水):日訪日外国人客数、日銀政策委員会・金融政策決定会合議事要旨など
6月21日(木):米新規失業保険申請件数、ユーロ圏消費者信頼感指数速報値など
6月22日(金):独製造業PMI、米製造業PMI、石油輸出国機構(OPEC)総会など

フィスコ

コメント

  • コメント (0)

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。

CAPTCHA


PAGE TOP