金=ゴールドの持つ本質的な価値として、「誰の債務でもない資産」という点が挙げられます。
それに対して、国が管理する紙幣・通貨といったおカネは、債務として発行されるものであり、信用の裏付けとなる政府や中央銀行に担保されています。
ということは、政府や中央銀行の信用がなくなれば、通貨の価値は弱まることになります。スープに水を足して薄めるのと同じようなこと。
それが、ジンバブエやベネズエラで起きているハイパーインフレで、誰も政府やお金を信用しない世界。
株式や債券は、企業などの事業体の債務や出資証券であり、同じく、発行元の信用不安や倒産で価値を失います。
金や通貨の本質的な価値とは
銀行学派の考え方によれば、中央銀行はプライマリバンク(中央銀行と直接取引の口座を開設している市中銀行)の担保の差出の対等物として通貨を発行するのが原則であり[2]、この場合通貨の価値は市中の信用力に依存している。一方で議会や行政府が国債を発行して中央銀行に引き受けさせている場合、その通貨の価値は行政府の信用(徴税権や国庫財産など)を担保としている。通貨管理制度:通貨の価値
日本政府や米国政府が、信頼できるからこそ、通貨の価値は保たれているという考え。
金の価値は、誰の債務でもないこと
一方、地中から掘り出された金の場合、誰の債務でもありません。金地金は、製造したブランドが刻印などで、ニセモノではないとを証明していますが、金そのものを担保しているわけではありません。
このように、誰の債務でもない資産である金と米ドルや日本円・人民元とは、大きな違いがあります。
金本位制度は、通貨の発行量を保有している金の額で制限されています。そのため、通貨発行を増やしすぎて価値を失う事態に歯止めをがかかっています。
管理通貨制度と通貨量
対して、現在の管理通貨制度は、通貨の発行量を通貨当局が調整するため、広い意味で発行量に制限はありません。さらに、コンピューターとIT技術の発達で、電子的な通貨が増えており、通貨供給量は大幅に増えています。
THE MONEY PROJECTのサイトで確認すると。金価格が1,275トロイオンス/ドルで、約7.7兆ドル。
コインや紙幣も同じく、約7.6兆ドル。そして、政府や企業などの負債全体は・・・驚きの215兆ドル・・・さらにデリバティブは、1,200兆なのかわからない位に複雑で巨額。
金の総量は、187,200トン(WGC)
巨大な債務は、誰が返すのか
世界経済は、巨額の債務で出来上がっており、この流れを逆流させることは、不可能でしょう。日本・米国・欧州・中国と経済大国で、景気悪化・株価下落が起きれば、すぐに、中央銀行がマネーを供給して助けるシステムが出来上がっているため、これを止めれば、大きな景気悪化や株価下落に見舞われます。
これこそが、中央銀行システムと管理通貨制度の欠陥で、金本位制に戻せ・金を買っておこうという考えの根本。中央銀行・政府は、通貨発行量を増やして、通貨の価値を下落させる宿命の元になるという意見。
斉藤 誠 : 一橋大学大学院経済学研究科教授の言葉を引用しておきます。
1万円札は「日銀がいつまでも返済する必要のない借金」などではなくて、「日銀がいつでも返済することを期待されている借金」なのである。紙幣が「返済される」からこそ日々無数の経済取引が紙幣を介して滞りなく取り結ばれている。当たり前であるが、この大切なことを一部の人は忘れているようである。紙幣や国債は返済される借金
日本銀行券は、実際に返済されるかは別にして、返済するだろう・大丈夫だろうという信頼の元に成り立っています。
それに対して、ゴールド=金は、政府や中央銀行ではなく、金そのものを人々は欲しがるだろう・価値を認めてきたという人々の信頼の元に成り立っています。
金が価値を失う時があるとすれば、人々の価値観が一変し、金を欲しがらなくなる時です。金を人工的に作れるようになるか・巨大な鉱脈が発見されるか・美意識の革命的な変化などですね。どれも実現する可能性の低い見通しです。
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