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  1. ファンダメンタル及び中銀
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ワシントン協定:中央銀行の金売却制限

中央銀行は金価格の維持を目的に、1999年にワシントン協定を結び金売却量を制限しています。

金を保有している中央銀行にとって金価格の値下がりは保有資産の目減りを意味。ところが、1990年代は、金価格が上昇せずに1トロイオンス300ドルすら割り込んでいました。しかも金は、利息がつかないため、持っているだけでは何の利益も生みません。

●金価格の推移(1980年~2015年)

金価格の推移

出典:世界経済のネタ帳

世界各国の中央銀行は大量の金を保有しています。そのため、中央銀行は、保有している金を売却することで金価格が下落するというジレンマに。

そのため、これ以上の下落を防ぐために、欧州各国の中央銀行はワシントン協定を結びました。

2019年9月26日にワシントン協定は終了。

ワシントン協定による金売却制限

1999年9月、ワシントンで開催されたIMF(国際通貨基金)総会でECB(欧州中央銀行)及び11ヶ国の中央銀行、スウェーデン、スイス、イギリスの各中央銀行が合意した協定でワシントン協定(ワシントンアグリーメント)と呼びます。

この協定は、米国、日本、IMF、BIS(国際決済銀行)も同意している為、主な中央銀行のほとんどが協定に沿った行動を取ります。これが第一次ワシントン協定(GBGA)

ワシントン協定の主な合意内容

「金は、世界的な準備資産として依然として重要」

(1)協定参加の15中央銀行は、決定済みの売却を除いて市場に売り手として参加してはならない。
(2)年間の金売却量は400トン以下、5年間で最大2,000トンを超えない事とする。
(3)金の貸し出し、デリバティブ取引を拡大しない。
(4)協定は5年後に見直し

5年後の第二次協定では、年間上限を500トン、5年間で最大2,500トンと上限が上がりました。

そして、2009年9月に発効した第三次ワシントン協定の適用期間で、再び年間上限を400トン、5年間で最大2,000トンに下げています。

2014年5月19日の第四次ワシントン協定では、年間の金売却上限枠の設定が消えました。これは、中央銀行が金の売手となり、金相場を崩す心配がなくなったからと言えるでしょう。

この協定には金売却量について明確な規定があり、第1次協定(1999年~)では年間400トン、第2次協定(2004年~)では年間500トン、第3次協定(2009年~)では年間400トンと、協定締結国全体で売却できる金準備の上限を設定することで、金需給の混乱を回避することが目指された。ヤフーニュース

以前の金価格が下落し続けていた時期に比べて、ワシントン協定(GBGA)は目的を果たしており、もはや必要ないという意見も登場していることを書き添えておきます。

欧州の中央銀行による金売却

欧州の金売却量は、ワシントン協定の直後は上限の400トン(500トン)近くでしたが、近年の金価格高騰に伴い、売却量を減らしており、2010年に136トン、2011年には53トンしか売却していません。

金を最も多く保有する中央銀行が、売って価格を下げてしまっては自分の資産を減らすだけ。そこでこのような金価格を維持する協定を作ったわけです。

ちなみに、量的緩和終了を先取りした相場急落の引き金を引いた2013年4月のキプロスの金売却計画は約10トン分でした。キプロスの金準備は13.9トンでしたからキプロス単体としての売却量は多くても市場全体からすると大きくありません。

それでも、大きな影響を与えたのは、キプロスをモデルケースとして他の中央銀行も行き詰ったら金準備を売却するのではないかという恐れを市場に与えたことが一因です。

金価格を予測する上で、金を大量に保有している中央銀行の動きは、常に注目されています。

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