FRBのバランスシートは、コロナ前の状態から大幅に上昇。4兆ドルを超えていたものを金融正常化に伴い、金融市場を動揺させることなく3兆ドル台に導いたのは、イエレン元議長の成果でした。しかし、そこに襲いかかっきたパンデミックで、バランスシートは膨張し、7兆ドルを超えています。2020年11月18日現在で、7.24兆ドル。QE1・2・3を超える規模に膨らんでおり、いずれ、出口戦略と金融市場へのショックを与えることになるでしょう。その時に、パウエル議長が任にあるかわかりませんが、バランスシート縮小が噂に出ただけで、急激に下落した金相場の悪夢を覚えている人も多いかと思います。
膨らむFRBのバランスシートは、どこまで増える
FRBのバランスシートは、ピーク時、8兆~10兆ドルになるとの予想もあり、そうなれば、ゴールド・株式等のチャンスも広がります。しかし、そろそろ、懸念を示している例も出ており、ブラックストーンのジョー・ザイドル氏は、米株上昇の理由となった材料が消えつつあり、バイデン政権になった場合の増税も心配しています。
バランスシートは、7兆ドルを超えている
ブルームバーグの予想では、金融危機時の2倍以上に、バランスシートが膨らむと予想
中央銀行は毎月8000億ドルの国債と400億ドルのエージェンシー・モーゲージ担保証券(MBS)を購入しながら、社債や地方債を購入し、中堅企業への融資を行っているため、年末までに10兆ルを超えることも考えられる。これは、FRB のバランスシートが 2008-09 年の金融危機後にピークに達したときの 2 倍以上になるだろう。第三の意味合いは,民間部門が,FRB によって強制された現預金の保有量の増加に反応して,他のよりリスクの高い,より利回りの高い資産を求める可能性があるということである。実際,これが量的緩和の主要な動機である。安全資産の供給を減らし,民間部門が保有しなければならない預金の量を増やすことで,FRB は民間部門がよりリスクの高い資産を求める需要を生み出す。その結果,金融資産の評価が上昇し,金融情勢が緩和される。FRB の資産購入は,民間投資家が保有できる資産の構成を変化させ,これが資産のバリュエーションに影響を与える。
では,FRB のバランスシートの急速な拡大の最終的な結論は何か。FRBは民間部門が保有できる資産の構成を変えており、金融資産の価格に影響を与えている。しかし、FRBが信用需要を抑制するために必要に応じて金利を引き上げようとしている限り、準備金の急激な増加が暴走するようなインフレにつながることはないだろう。
以前のようなハイパーインフレの気配こそないものの、リスク資産の価格上昇はありえます。新型コロナウイルスのワクチンが開発され、経済が回復しだした時に、FRBは、即座に量的緩和を終え、金利を上げることができるでしょうか。私はできないと思います。中央銀行のドーピングによって支えられた経済において、ドーピングを止めた時の痛みに耐えるのはつらいこと。バーナンキ氏は、何度もバーナンキショックを市場に与えていましたからね!
ピムコが、2020年5月17日に、日経ヴェリタス Market Eyeに記載した記事では、FRBのバランスシートは、8.5兆ドルに達するのではという見方。
22年までゼロ金利
FRBのバランスシートは、パンデミック前の4.2兆ドルから、ピーク時には8.5兆ドル前後の水準に達すると予測しており、それ以上の水準となるリスクもあるだろう。FRBは各種資産の買い入れに加え、様々な融資及び流動性供給の枠組みや施策を発表しており、総額は2.5兆ドルに達する。ピムコ:2022年までゼロ金利
FRBは、デフレにならず、インフレ2%の目標を達成するため、2%を上回るインフレ率を容認しています。
バランスシートの縮小は難しい
新型コロナ対策後の主要中央銀行(FRB、ECB、日銀)のバランスシートの資産の部の変化
中央銀行のバランスシートが拡大すると、世の中に出回るお金が増えるので、景気が良くなり、物価も上昇しやすいというメリットがあるのに対し、拡大し過ぎてしまうと、通貨の信用が低下し、お金の価値が大きく減少、物価が急騰し、深刻な景気減速となるリスクがあります。
また、金融引締を行い、バランスシートを縮小する場合では、世の中に出回るお金が減るので、景気の過熱を抑制することができ、物価の上昇を抑えることができます。ただし、縮小しすぎてしまうと、お金の回りが悪くなり、景気が大きく後退してしまうというリスクが発生します。オアンダ
オアンダ指摘のように、バランスシートを拡大しすぎると、通貨信用低下・インフレリスクがあります。これは、金価格の上昇に大きく寄与した考え方です。そして、バランスシート縮小は、景気後退リスクがあるため、難しい。
そして、新型コロナウイルスのワクチン開発が進んでいることで、FRBにプレッシャーがかかりはじめました。
ムニューシン長官はパウエルFRB議長への書簡で、資金の返却により、議会は返却された総額4550億ドルを景気対策に回せるようになると説明した。CARES法に基づき、FRBには、企業や非営利団体、地方政府への緊急融資のための資金が割り当てられた。ロイター
Mnuchin is declining to extend most of the Fed’s emergency credit programs beyond year-end & asking the Fed to return all unused CARES Act risk capital. This move shuts down the corporate credit programs that propped up markets last spring. So the training wheels are coming off.
— Jeffrey Gundlach (@TruthGundlach) November 20, 2020
ガンドラック氏は、補助輪が外れるようなものだとツィート。
もし、バランスシート縮小が話題に登れば、金相場への下げ圧力になるので注意しておきましょう。
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