金価格が大きく値崩れしている中、価格の上昇や下落にかかわらず利益を得る方法があります。
それが「鞘(サヤ)取り」という方法です。
【サヤは価格差のこと】
商品先物取引で良く利用される取引方法で、同じような値動きをする2銘柄の一方を売り、他方を買うことで、両銘柄の価格差の拡大(もしくは縮小)で利益を得ることができます。
例:金相場と白金相場など
新規取引を【売りから始められる】ため、値上がり局面・値下がり局面の両方で利益を得るチャンスがある
サヤ取り=アービトラージ
・株式取引でも、同業種で相関性の高い2銘柄(ビールや自動車など)で、割高な銘柄を売り、割安な銘柄を買う方法
・債券取引でも、日本国債と米国債、イタリア国債とドイツ国債など、同様の方法で取引が行われます。
特に、このサヤ取り(英語でアービトラージ)を得意として、専門に行っている投資家やファンドも世界に多数存在します。
商品先物市場でのサヤ取りの種類
1.同銘柄・異限月間
商品先物は、同じ銘柄でも限月により価格が違います。この限月間の価格差(サヤ)を利用して取引をします。
上記のように東京金相場(13年7月10日)は、13年8月限(当限)が4048円と最も高く、14年6月限(先限)が4030円と最も安くと同一銘柄なのに価格に18円の差があります。
2.同銘柄・異市場間
同じ銘柄を違う市場で扱う場合があります。とうもろこしは東京商品取引所と大阪堂島商品取引所で上場されていますので、その価格差を利用します。また、日本と海外の価格差を利用する方法もあります。
※サヤ取りの中でも難しい部類に入ります。
3.異銘柄間
値動きに相関性のある銘柄同士の価格差を利用して利益を狙います。
金と白金、大豆ととうもろこし、原油とガソリンなどが代表的なサヤ取り銘柄です。
●2013年1月からの金価格(ローソク)と白金価格(ライン):金と白金をエースCXオンラインのチャートで表示してみました。
基本的に、両銘柄の上昇や下落のタイミングが似ていることがお分かりいただけると思います。しかし、下落時や上昇時の値幅に差があったり、銘柄固有の要因で価格変動することもありますので、価格差は縮小や拡大を繰り返しながら動きます。
サヤの拡大と縮小で利益を得る方法
銘柄や限月間の価格差(サヤ)を利用した売買の基本をご紹介します。
サヤ取りは、価格の上昇や下降を予想するのではなく、サヤが縮小するか拡大するかを予想します。
1.サヤの縮小を予想
価格が高い方の商品(限月)を売り、価格が安い方の商品(限月)を買います。予想通り、価格差が縮小すると売った商品(限月)を買戻し、買った商品(限月)は転売して決済します。
2.サヤの拡大を予想
価格が高い方の商品(限月)を買い、価格が安い方の商品(限月)を売ります。予想通り、価格差が拡大すると買った商品(限月)を転売し、売った商品(限月)は買い戻して決済します。
3.注意するポイント
●買いや売りをスタートするタイミング及び決済は同時に行います。
●予想に反してサヤが拡大・縮小した場合は損失が生じます。
●注文枚数は倍率を同じにします。
例えば、金は1枚=1,000g、白金は1枚=500gですから、金1枚に対して白金は2枚取引します。
売りと買いの「枚数×倍率」がイコールになるように計算を行ってください。
取引の特徴
一番、初心者の方でも利用しやすいのは同銘柄・異限月間です。
倍率も同じで、価格の連動性も高いため、リスクが小さくなります。=リターンも小さくなります!
・東京金の60分足:ローソク10月限、ライン12月限:ラインとローソク足が上下入れ替わりながら変化しています。
期限の短い限月(期近)は、実際の需給バランス、期限の遠い限月(期先)は、将来予測が強く反映されます。
多くの場合、二つの異なる銘柄の価格差は、単体での価格の動きより小さいため、通常の商品先物取引よりリスクが小さい取引です。
この取引方法は、CTA(コモディティ・トレーディング・アドバイザー)と呼ぶアメリカで盛んな商品先物専門の投資顧問会社も活用しています。また、この取引が増えることで出来高が増加し流動性が確保されるという市場に厚みが出る効果もあるのです。
商品先物取引:エースCXのサヤ取り用チャートの表示方法
今回の記事でご紹介したチャートを表示する方法を解説した動画です。