トランプ政権に右往左往する金融市場。その影響で、NY金価格は上昇トレンドを描いてきました。最終的に1200ドルをキープして週末を超えることに。
そして、ついに、1月20日、トランプ大統領が誕生。世界中で話題となりましたね。1月11日の記者会見で具体的な経済政策が無かったことから、トランプラリーの失望感で株が売られて、金価格が上昇。
その時と同じく、今回も具体的な施策よりも、トランプ大統領の考え方・政策の方向性を宣言する就任式でした。トランプ大統領の就任演説
大物投資家ジョージ・ソロス氏は、トランプさんの当選で大きな損失をだしたとのこと。彼をはじめ、反トランプ陣営の反撃はすでに始まっています。
●各金融市場の動き:GMOクリック証券のCFD:日足チャート
トランプ大統領就任:政策から金価格を読む
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トランプ大統領、米国第一主義を全面的に打ち出しています。
近年のグローバル化は、国家の壁を取り払うことと多国籍企業の支配力強化が大きな流れでした。究極的には緩やかな世界統一政府を作っていこうという動き。
今回、トランプ政権は、その動きに明確なストップをかけています。国境・国民・国家こそが大事で、多国籍企業といえどもその下に付くべき。
ワシントン及びエスタブリッシュメント・他国から米国の労働者に富を戻す。
この考え方、必ずしも間違っている訳ではありません。確かに、今の経済格差・新興国の成長の陰で没落する米国の中間層を考えると、リバウンドがあってしかるべきでしょう。
また、政権の優先事項も発表しています。mybigappleny様のサイトから引用いたします。
1.米国第一エネルギー計画(America First Energy Plan)
→オバマ前政権が掲げた”気候行動計画(Climate Action Plan、二酸化炭素の排出量削減や米国内ならびに世界で気候変動への対応を目指す)”、”米国水質法(Waters Of The U.S.、水質保全を目指しシェールガス生産に絡む水圧破砕を規制する) ”を不必要と指摘。シェールガスやクリーン石炭エネルギーの生産を支援へ。大気汚染などにも配慮し、環境保護庁(EPA)が注力する政策を再調整していく。2. 米国第一外交政策(America First Foreign Policy)
→打倒イスラム国(IS)が最優先課題で、必要とあれば軍部と共同戦線を張る。同盟関係にある諸外国と協力し、テロリストへの資金源を断つよう努力すると共に、サイバー攻撃にも対応する。合わせて米軍も増強。3.職と成長の回復(Bringing Back Jobs and Growth)
→向こう10年間で2,500万件の雇用を創出、成長率は年間4%増を回復へ。減税と税区分の簡略化(選挙中は法人税を35%→15%、所得税を7区分から3区分へ縮小すると公約)、規制緩和を推進していく。4. 米軍増強案(Making Military Strong Again)
→国防予算の強制削減を廃止し、米軍再構築を目指す予算案を提出へ。イランと北朝鮮からのミサイル攻撃を打破するため、最先端のミサイル防衛システムを開発する。サイバー攻撃にも対応。退役軍人の支援も強化する。5.治安の強化(Standing Up For Our Law Enforcement Community)
→米国50都市での殺人率は2015年に17%増加し25年間で最悪を記録し米国全土では50%も増加したため、犯罪対策を強化していく。同時に不法移民の流入を抑制するため国境間に壁を建設し、ギャング流入を阻止へ。犯罪歴のある不法移民は国外退去させる。6.米国民のための貿易協定(Trade Deals Working For All Americans)
→環太平洋パートナーシップ協定(TPP)離脱、並びに北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を目指す。また、貿易協定に違反し米国に損失を与える各国を商務官と協力して炙り出し、厳然たる措置を講じる。
上記を見ても分かる通り、一方で、大きなリスクも存在します。
トランプ政権のもくろみ通り、米国が成長するシナリオを描いた場合、他国の犠牲や衰退が起きえる可能性が高いと思います。就任式の演説を聞く限り、トランプ大統領は、それで良いと考えているようで、日本をはじめ、米国に付くか離れるかの明瞭な踏絵を迫られる国は多いのではないでしょうか。
トランプ政権のリスク
- ビジネス優先で環境保護対策が後退する
- 親イスラエル、打倒イスラム国の姿勢が、中東の安定を脅かす
- 過大な財政支出が財政赤字やインフレをもたらす
- 米国優先主義・保護貿易が他国の窮乏化や報復をもたらす
- 米軍の増強が、軍拡競争を呼び、戦争リスクが高まる
- 各国が自国優先主義を掲げて、世界が分断・亀裂の時代になる
- 米国内の格差が縮小するも、米国と他国の格差が広がり、米国への憎悪が高まる
- 米国と中国の対立が、アジアの安定を脅かす
これらのリスクが顕在化した時を考えて、金投資を地道に行う人は、世界的に増えそうです。
強いドル?弱いドル? 金価格はどうなる。
ドル高=NY金価格を安くする相関関係があるため、金投資をする上で、米ドルの動きを見るのは必須。
- 新財務長官のムニューチン氏は、長期的に強いドルが必要
- トランプ大統領は、ドルが強すぎると競争力を失う
と矛盾した発言を市場に投下しています。
トランプ政権の施策的に、インフレ・金利上昇・米国への投資拡大が起きそうなので、自然にドル高が起きる可能性が高い。
ドル高が進むと、米国の競争力が落ちてしまう。ただし、あからさまなドル安誘導を行うと、米ドルの信頼を無くしかねない。
そのため、幾つかの目的を込めて発言しているのでしょう。
- 他国へのけん制として自国通貨安にするな。
- FRBに対して、ドル高を出来るだけ抑えろ。
- 投資家に対して、安心して米国に投資してください。ドル安にはしませんよ
かつて、ルービン財務長官も「強いドルは米国の国益」と度々発言していましたしね。
そう考えると、特に中国の人民元政策が難しくなります。中国政府は不動産・株価維持をしながら、人民元安も止めなければなりませんから。この辺りはいずれまたご紹介します。
2017年以降の世界経済は綱渡りの様相を呈してくるのではないかと思います。しばらく、金相場が急上昇するとは思えません。しかし、中長期的に見ると、世界経済及びマネーの動きは、かなり危うい状態になるのではないでしょうか。
●NY金価格の月足チャート:EVOCX
久しぶりに月足チャートを貼っておきます。
必ず、金投資が輝く時代がまた到来しそうです。
■来週の注目スケジュール
1月23日(月):全国スーパー売上高、月例経済報告関係閣僚会議など
1月24日(火):独製造業PMI、ユーロ圏製造業PMI、米製造業PMIなど
1月25日(水):貿易収支、独IFO景況感指数、米MBA住宅ローン申請指数など
1月26日(木):企業向けサービス価格指数、米新規失業保険申請件数など
1月27日(金):シャノン上場、米GDP速報値、中国 春節などフィスコ
来週は、中国の春節ですから、去年同様に、金融市場のリスクに注意。中国株・人民元・金相場の動きに注目です。
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