金価格とインフレは大切な関係。インフレになればモノの価格は上がり、商品・実物資産の一つとしての金価格も上昇するというのがセオリーでした。しかし、多くのアナリストが解説するように、インフレとばかり結びつけて考えるのはリスキー。
1970年代の高インフレ時代に、大幅上昇。
●1970年~2013年4月30日の超長期【金価格チャート】(クリックで拡大):データはWGC
金相場に関する主な経済イベント
- 1973年・78年末:二度の石油危機
- 79年1月:イラン革命
- 80年9月:イラン・イラク戦争
- 85年9月:プラザ合意
- 91年1月:湾岸戦争
- 2001年9月:米国同時多発テロ
- 2008年9月:リーマンショック
- 2009年3月:米国:QEスタート
- 2014年10月:QE3終了
1960年代後半からはじまった米国のインフレは、石油ショックの影響でさらに上昇。これにより金価格も急騰。
第二次石油ショックを受けて、1980年一月には875ドルと急激な上昇。しかし、その後は、小動きこそあったものゴールドブームは去り、新興国の台頭による資源ブームが起きるまで、忘れられた資産になっていました。
●米国と日本のインフレ率推移
出典:世界経済のネタ帳
株式資産の上昇で、インフレでも金価格は上昇しない時代
その間、米国のインフレ率は5%を上限辺りで推移するも、ゴールドのインフレへの反応は弱まったまま。インフレヘッジとして役に立たない時代が実は長く続いていたのです。
これが何を意味するのか?
元東京銀行の為替ディーラーだった若林栄四氏の言を引用すると、【金融業の時代が始まった!】というのがその答え
金融業の時代は、マネーが高リターンを求めて様々な金融資産や不動産に向かう時代。低インフレ・資産インフレ時代には金利を生まない金はお呼びでなくなる。低インフレと資産インフレは金価格の下げ要因となり、逆に高インフレと資産デフレは金価格の上げ要因となるからだ。
出典:異次元経済 金利ゼロの世界
金価格と単純なインフレ・デフレを結び付けて考えると失敗するという若林氏の意見。金は、実物資産(モノ)の側面と通貨(マネー)の両面を持ち、1980年以降は、通貨としての側面が強くなってきているのです。その時代、価格に影響を与えるのは、株価・不動産などの資産インフレ。
低インフレ・資産インフレ=金価格下落
高インフレ・資産デフレ=金価格上昇
●NYダウの推移:1985年~2016年3月
1985年には1280ドルだったNYダウは、株式の時代=資産インフレ時代に大きく上昇をし続け、サブプライムローンから始まる世界経済危機も乗り越えて18000ドル台に達しました。10倍以上の継続した値上がりを続けた時代。
1970年代の石油ショックインフレ時代は、株価が横這い、その分だけ金価格は上昇。その後は、ニクソンショックで金本位制が崩壊。金のくびきからマネーが外れて、株式上昇の時代が続きました。
21世紀に入ると、今度は資源・中国をはじめとした新興国ブームが起きて金価格は上昇。
しかし、2014年から原油をはじめとした資源価格は下落。マイナス金利など世の中はデフレ傾向。インフレに強い金のセオリーからはデフレになると下落するはず。にもかかわらず、金価格が上昇し続けているのは、資産インフレが崩壊する兆しが見えているからでしょう。
資産価格のデフレ時は金投資が増える
- 世界金融危機時にデフレであっても需要が増える
- 1930年の大恐慌時も同じ
- ゼロ金利でかつ通貨切り下げの脅威に対抗できる
- 銀行破たんリスクに対して金投資は解決策の一つ
- 金自体の価値が無くなる可能性が低い
- 本当の危機に陥った時は米ドルよりも金選好の方が強くなる可能性がある
- プラチナや銀など工業用としての用途がメインの貴金属よりも安全資産としてのプレミアムがある
資産インフレの崩壊=デフレでも輝く金投資
金利・配当が付かないため、株式の上昇局面では魅力の薄い金投資。
しかし、市場優先主義の行き過ぎで格差拡大・需要減少によるデフレが起きている現在、大幅に暴騰する可能性があります。
すでに、ECB・日銀の金融緩和は限界を迎えており、コロンビア大学のスティグリッツ教授はじめ、近年の経済政策や中銀の金融政策を失敗だと断じている経済学者が増えています。これから、増やし過ぎた中央銀行の緩和マネーの収拾を付けなければいけない過程で、株式や不動産・債券などが下落する資産デフレの恐れに対して、ビットコインや金投資が見直されているのが2016年3月現在の状況。
中央銀行の信用が失われる時代が起きると、紙幣・現金への不安感が増大。かといって電子通貨としてのビットコイン・ダイヤモンドやエメラルドなど人為的に増やせる資産に全幅の信頼は得られません。
米国は。トランプ政権の誕生以降、経済好調が継続。それゆえに、FRBの金融引き締め(利上げ&バランスシート縮小)が行われています。実体経済の好調=金融引き締めなのですが、それに、株式をはじめとした金融市場は耐えられないでしょう。つまり、膨らんだ資産インフレはデフレへと転換するときが来ます。2018年から2020年に資産デフレが起きる可能性は高いはず。
しばらく続きそうな世界デフレの波、デフレ=金価格下落と昔のセオリーで考えると失敗するかもしれません。今の相場は、米ドル・ユーロなどに代わる通貨の側面が強く、資産デフレの局面で急騰する可能性を秘めた資産と言えるでしょう。
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