先週の金相場は、トランプ勝利で市場が乱高下。当初は、トランプ勝利を予想していなかったことによるリスクオフの嵐が吹き荒れて、金価格は上昇し、株価は全般的に下落。
次に、トランプ氏の勝利演説がまともだったこと。トランプ候補の経済政策が、財政支出・規制緩和・インフレ方向とビジネス有利なことが見直されて、金価格は下落・株価は上昇と、当初と反対の方向に動きました。
トランプショック当日の状況:リベラルとポリティカル・コレクトネスに支配されたマスコミの予想は当てになりません。
各市場の日足チャート:GMOクリック証券のCFD
日米の株価は急激に上昇しましたが、ブラジルの株価は大幅下落。これが意味するものは?
●メキシコペソ/円の日足チャート:LIONFX
メキシコペソは下落。5円前後で推移。11月9日には、4.976の最安値を付けました。トランプ大統領の誕生は、メキシコや中国にとって悪夢の始まりになる可能性が生じています。
一方、米国の方は、経済の分かる大統領の誕生で、トランプミノクスが開始されて、規制緩和と財政出動というデフレ退治の本命政策が始まるかもしれません。大統領&議会を共和党が取ったことで、スムーズな政策進行が期待できます。
ただし、そうなると金相場にはマイナスですから、金投資には苦しい環境。リスク面として存在する地政学リスクの高まりや争い激化の場合は、金価格にプラス。
トランプミノクスで世界経済と金相場はどうなる?
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今のところ、トランプ大統領の誕生は、世界経済への不透明感を高めるとの意見が多い。では、実際の相場はどのように動いているのでしょうか。
- 金銀・プラチナは下落
- 日経・NYダウは上昇(特に米国株は上昇)
- 米ドル/円はドル高円安
- ユーロ/ドルはユーロ安ドル高
- 米国債は上昇
- ブラジル・メキシコ株は大幅下落
- 新興国株は大幅下落
- 中国株はまちまち
- 米国REITは小幅安
少し情勢が落ち着いた後の、金融市場の動きはこのような形
ドナルド・トランプ氏の事について、日本ではTPP反対の立場が強調されているます。金融市場と経済に関わるならば、その前段階であるNAFTA(北米自由貿易協定)がどうなるかを見ておかなければいけません。
米国・メキシコ・カナダの自由貿易協定であるNAFTAが、米国の雇用を奪っているとトランプ氏は主張しており、条項の見直しを参加国に求める発言を繰り返しています。脱退も辞さない構えであり、この件は公約の中でも強いモノの一つ。実行された場合にメキシコの貿易は多大なるダメージを受けるだろう。
現在のメキシコは、原油安の影響で、経済にダメージを受けており、貧富の差も大きい。世界一の金持ちに何度も選ばれているのは、メキシコ人富豪のカルロス・リム氏。その一方で、メキシコは犯罪も多く、不法移民としてアメリカを目指す人も多い。
すでに、金融市場は、メキシコが被るダメージを予測して、ペソ安・株安に動いており、米国がシャッターを下ろせば、情勢悪化する可能性は高い。
グローバル化の収縮
グローバル化は、世界全体を平均化することと言い換えることもできる。つまり、新興国の賃金や生活水準は上昇し、先進国の賃金や生活水準は下落します。
これがゆっくりと進展していき、かつ世界全体の平均値が上昇していけば、グローバル化は成功の道を歩めたかもしれない。ところが、現実に起きたのは、先進国・新興国双方で一部の人間が裕福になり、その他多くの人間にまで富が回りきらなかった。それでも、全体のパイが増えている間は良かった。いずれは・・・という夢も見られた上に、少しは富も回ってきました。
しかし、リーマン・ショックを迎え、成長エンジンだった中国が減速し、次の成長エンジンに期待されたイスラム・アフリカ・インドは、上手く成長しきれず、紛争・テロ・文化的衝突が起きてしまう。こうなると、一部の裕福な人間以外の不満は高まり、反グローバル化が強まることへと事態は進行。
金融市場の初動からは、トランプの経済政策によって、米国の雇用が増加・インフレ・中南米の危機などが伺えます。さらに、トランプ氏は、米国の規制緩和を唱えており、この点、中央銀行の金融政策に限界があって、規制緩和による経済成長&財政出動を唱えているポール・クルーグマンをはじめとする経済学者の意見と共通。
トランプミノクス:識者の金相場や金融市場に与える影響。
スタンレー・ドラッケンミラー氏の意見:ジョージ・ソロスの元パートナー
アメリカ経済はあまりに過剰な規制を受けている。その撤廃は効果があるだろう。(中略)わたしはいつも規制緩和と税制改革が出来ないのかという話をしていた。何故それが出来ないのか? そして今、それが達成される可能性がかなり高いと思う。グローバルマクロ・リサーチ・インスティテュート
ドラッケンミラー氏は、今後の相場について、経済成長に賭けると決めた模様。金投資をやめ、金利上昇を予想して債券を空売り。経済成長に反応するセクターの株を買い始めた。ドルはユーロに対しての上昇を予想。
Gavekal Dragonomics首席コラムニストのアナトール・カレツキー共同議長
- 利点(1)経済成長と財政出動による景気刺激
- 利点(2)税制改革
- 利点(3)規制撤廃
- 利点(4)地政学
- 欠点(1)世界貿易
- 欠点(2)金融政策、インフレ、長期金利
- 欠点(3)米ドル
- 欠点(4)新興国市場
- 欠点(5)欧州
トランプ氏によって、減税・財政出動・規制撤廃が行われると情勢は大きく変化するとカレツキー氏は予想。それは、長期金利の上昇とインフレを呼び米ドルが高くなるとの見通し。レーガン大統領のレーガノミクスになぞらえてトランプミノクスと呼ばれはじめています。
金利高・株高の状況において、金利を生まない金相場は不利。ゆえに、ドラッケンミラー氏は金を売却する判断を下したのでしょう。米FRBの利上げも近いですし、しばらくは、金相場の下げリスクに警戒することが必要です。
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