新型コロナウイルスによるアメリカの財政出動は、空前の規模に膨れ上がりそうです。2.2兆ドルの財政出動が決まった後、米政府は、第四段階の財政刺激策を計画中。ナンシー・ペロシ下院議長は、次の景気刺激策が、1兆ドル規模になると電話会議で、民主党員に伝えたとのことで、今月中の可決を望んでいる様子。
どんどん膨らむ米国の財政赤字
こうなると、米国の財政赤字は、どんどん膨らんでいきます。いずれ、新型コロナウイルスの問題が収束していけば、財政赤字問題が市場のテーマとなり、米ドル安に繋がりかねません。相対的に、ゴールドの価値は上がっていくでしょう。1トロイオンス1,650ドル前後の金価格は、どこまで上がる可能性があるのか恐ろしくなってくるくらいです。
もちろん、誰もが、新型コロナウイルス対策にお金を費やしたいと考えるでしょう。しかし、無い袖は振れません。米国の2020年度予算での収入は、約3.6兆ドルレベル。これで、2兆や1兆の景気刺激策をぶちあげられるのですから、大盤振る舞いは凄まじい。どこにも、そんなお金はありませんから、米ドルを刷りまくることしかできないはず。米ドルの価値が薄れるのも当たり前。通貨としては、中国や欧州・日本もおなじように財政出動するでしょうから、米ドル安にはなり難い面もあると思います。その分、金価格は上昇すると予想でしています。
ジェトロのデータでは、2020年米国予算は以下の通り。財政赤字解消できるのでしょうか。
歳出総額は前年度比4.8％増の4兆7,460億ドル（GDP比：21.2％）、歳入総額は6.0％増の3兆6,450億ドル（16.3％）との案を示した。これにより、財政収支は1兆1,010億ドル（マイナス4.9％）の赤字、政府債務残高は18兆870億ドル（80.7％）となり、2018、2019会計年度と比べて財政赤字幅が拡大し、債務残高も拡大する見通しが示された。ただし同時に、大幅な歳出削減策の実施により、今後10年間で2兆7,000億ドルの歳出を減らし、財政赤字のGDP比を2029会計年度には1％以下に縮小し、今後15年間以内に財政赤字を解消させるとの見通しも示した。2020年米国の予算
ゴールドマン・サックスのチーフ・エコノミスト、「 Jan Hatzius」氏によれば、財政刺激策の総額は、2020年にGDPの18％に達するだろうと予測。そして、FRBは、財務省の発行する借金を飲み込んでしまい、あっというまに、バランスシートに巨額の借金が計上されることになります。
すでに過去最高レベルに！
米連邦準備理事会（ＦＲＢ）が１９日公表したデータによると、ＦＲＢのバランスシートは今週、過去最高の４兆７０００億ドルに達した。金利を引き下げた割引窓口（ディスカウント・ウィンドウ）貸出制度の利用も増えた。新型コロナウイルス流行による経済への影響を軽減するため打ち出した措置の効果が出始めている。ロイター
そして、外国法人をはじめとした外国の米ドル債務は、過去の金融市場にかつてなかったレベルにまで達しており、再三、IMFをはじめとした国際機関が警告を発してきました。元ゴールドマン・サックスのラウール・パル氏の言葉によれば、世界を奈落の底に導くのは、米ドルの強さにある。ドルはすべての競争相手を食べてしまい、今度は、自分自身を食べようとしていると。
金価格の上昇は、金融システムのリスクとソブリン市場の不安定を先取りしているということでしょう。
この記事へのコメントはありません。