長らく、1トロイオンス800ドル前後で動いていたプラチナ価格は、2019年2月末ごろから上昇しはじめ、900ドルに載せつつある。同じ貴金属の金価格やパラジウム価格の上昇に対して、供給過剰懸念を元に下落していたプラチナの上昇めどをチャートから確認します。
NYは、900ドルを超えて上昇し、東京プラチナ価格も3250円を超えてきました。このまま上昇を続ければ、これまでのレンジを抜ける可能性が高まっています。
2019年プラチナ価格上昇の理由
これまで、出遅れていたプラチナが上昇しているのには、いくつかの理由があります。まず、価格低迷の理由から見ていきましょう。
NY白金スポット:GMOクリック証券のCFD 2019年4月8日
プラチナ価格低迷の理由
1.供給過剰:2019年の需要774万オンスに対して、供給842万オンスと68万オンスの過剰
2.欧州ディーゼル車市場の縮小で排ガス触媒需要の減少
3.パラジウムの高騰により、同時に生産できるプラチナの生産量が落ち込まない。
4.中国経済の減速により、宝飾市場の縮小でプラチナ需要も減少
2018年までは、こういった流れの元に、800ドルを割り込むレベルまで下落していました。これにより、金やパラジウムとの価格差が拡大。これが、その後の布石。
そして、2019年に入り、トレンドが変化。
プラチナ価格上昇の理由
1.NY金価格及びパラジウム価格上昇によるプラチナの割安感
2.米中貿易協議の進展による株式市場の上昇。今後の動きは、まだ不明ながら、米中交渉がまとまる可能性が出ています。
3.南アフリカの鉱山会社でストライキや停電の発生
4.ETF投資家が、プラチナとパラジウムの価格差拡大からETF投資を増加。
小菅努氏の調査では、過去最高レベルのプラチナETF投資が起きている。この勢いが続けば、供給過剰から供給不足へと転換しかねないとの予想。
しかし今年に入ってから、特に2月入りと前後して投資人気に火がついたのだ。昨年末の投資残高は202万9,592オンスだったが、それが1月末に210万1,094オンス、2月末に222万4,005オンス、3月末に248万5,578オンスとなり、今月はついに過去最高となる250万オンスを突破している。年初からの累計だと47万7,865オンスもの投資需要が創出されている。プラチナETFの増加
5.プラチナ地金とコインへの需要は、金との価格差拡大から堅調。
パラジウムは、中国・インドをはじめとした国々の排ガス規制強化により需要増加が見込まれています。そのため、2019年もパラジウムの供給不足は拡大する見込み。
深刻な大気汚染に悩む両国は、パラジウムやプラチナ価格が上昇しても、排ガス規制をやめられない。電気自動車の普及は、インフラ拡充に時間がかかるため、まだ先の話。
中国政府の発表によると、排ガス規制「China 6」は2段階に分けて実施される予定である。つまり、「China 6a」は2020年7月から、実路走行(RDE)試験を含む「China6b」は2023年7月からそれぞれ義務付けられることになる。しかし、多くの省や都市は「Blue Sky Protection Plan(青空を守るための三年計画)」に基づいて2019年7月に新基準を採用する予定。白金相場の見通し
プラチナ価格:今後の予想
プラチナ価格の今後については、パラジウムや金価格に引っ張られて、底値はある程度、固めだと思います。
とはいえ、パラジウムからプラチナへの触媒需要切り替えは、なかなか難しいところで、技術面及び関係機関との認証に大きなコストを必要とします。
NY白金が900ドル、パラジウムが1345ドルと400ドル以上の価格差が続くのならば、切り替えも現実的なのでしょう。しかし、プラチナの貴重さは、金やパラジウム以上ですから、全面的な切り替えは難しいと思います。
今回のプラチナ上昇ですが、パラジウムの買い占めに動いている筋が、プラチナの方にも目を向けた感がありますから、大きくレンジを離れる可能性があることを覚悟しておきましょう。
パラジウムのように、急騰するためには、パラジウムからプラチナへの需要切り替えが起きないと難しいでしょう。そのため、今後の予想としては、引き続き900ドルを挟んだ動きと見ます。
この記事へのコメントはありません。