2014年の金市場における供給と需要:ゴールドサーベイ2015

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金市場のオーソリティ、ゴールド・フィールズ・ミネラル・サービシズ((GFMS)が調査したゴールドサーベイ2015は、需給を見る上で、もっとも詳細かつ正確なデータが揃った資料。日本語版ダイジェスト(2015年6月)を田中貴金属工業株式会社が出していますので、感謝を込めて要点をまとめてみました。

2014年の金市場の供給:ゴールドサーベイ2015より

  • 鉱山生産量は3,133トンと6年連続の増加(2%増加)
  • 産金コストは2013年の減損費用の減少で1,314ドル/トロイオンス。この評価損を除くと1,208ドル
  • 正味生産者ヘッジは103トン
  • 中古金スクラップ供給量は1,125トン(13%減少)と7年ぶりの最低水準

2014年の金鉱山生産量は、3,133トンで市場最高水準。金価格が長らく上昇して高値だったことから、金投資が増加しており、生産量が増加。

金供給量

産金国の多くでは、大型プロジェクトで生産量が増している。カナダのデユータ湖など(detour lake)、kibali、Oyu tolgoiなど。バリックのコルテスやニューモントのネバダ複合鉱床は、成熟して、産金量が減少。

2014年の生産量はやや増加したものの2015年は横這いと予想される。金価格の下落により、新規プロジェクトへの投資や探鉱費用が減少している。平均産金コストすら下回る金価格への対処から、産金会社は、既存鉱山の業務改善に重点を置いている。

生産者ヘッジは、供給要因となりヘッジ残高が純増。1990年代以降で2度目。Polyus Gold InternationalFresnillo Groupを代表とする数社が、自国通貨建て金価格のヘッジを実施。米ドル相場の上昇に対処。

中古金スクラップは、約13%減少、この数字は米ドル建て金価格の下落率10.3%に近い。世界供給量に占める割合は、26%とピークの2009年に42%だったことから比較すると大幅減少。先進国は、金価格下落と景気見通しの好転で換金が減少。北米22%、欧州17%、インド26%、中東15%減少。中国は、中古金スクラップ供給量が15%増加。

2014年の金市場の需要:ゴールドサーベイ2015より

  • 現物金の総需要は4,158トン(-18%減少)
  • 宝飾用需要は、2,213トン(9%減少)
  • 工業用需要は400トン(-4%)
  • 現物金投資、コイン、ETF等の投資総需要は919トン(3%増加)
  • 金ETFの売却は鈍化、160トンで前年の880トンから大幅減少
  • 個人投資家の金地金とコイン購入は、1,079トン(40%減少)
  • 公的部門の購入は466トン(14%増加)

2014年の金相場の需要は、18%減少と2010年以来の低水準。

宝飾品需要

理由は、中国景気の悪化による投資目的の宝飾品購入が減少した事、宝飾品加工需要は前年比で-33%と急激な減少。ただし、中国での金需要は2013年が異常な程の水準で、減ったとはいえ2014年は、中国史上2番目の高い需要。

中国以外の金投資への需要は緩やかに回復し、中国を除く宝飾加工需要は6%増加。欧州の宝飾需要はイタリアやトルコの需要旺盛で10%増加。

●工業用は、一部国の景気低迷と代替金属への移行で若干の減少。歯科部門などで代替品への移行や金使用量の削減などが需要減少の一因。

金投資の需要は、919トンと3%の増加。世界景気や地政学リスクの高まりで、第二四半期以降に金ETFの清算が減速。しかし、中国とインドの需要減少で、金地金や金貨の需要は1,079トンと40%の減少。

中国は、習近平政権の汚職対策で、経済減速・金価格の下落で、現物金需要が約53%減少。

インドは、金地金の購入量が59%減少して2005年以来の最低水準。

●公的部門は5年連続で金を買い越し。

1964年以降で、2番目に高い466トンを購入。ロシアおよびカザフスタンの購入が大きい。ロシアは2014年に173トンを購入。ウクライナ危機以降に増加。イラク・ロシアなどの購入は、自国通貨を支える意味も持つ。

2014年9月に第4次協定を結んだ中央銀行金協定(CBGA)の加盟国が大量の金売却を行わなかったことも公的部門買い越しの理由。

ゴールドサーベイ2015での金価格と市場の予想

2014年の金価格は、米FRBの利上げを織り込み、下落。今後の金利上昇局面で、金相場はどの水準で落ち着くかは議論の余地あり。

●米ドルとNY金価格:1999年~2015年10月27日(GMOクリック証券)

金と米ドルの価格

  • 金融危機前の価格:600ドル~700ドル
  • 鉱山業界:金価格が1200ドルでは操業維持が困難
  • 地上在庫が大量にあるために産金コストだけで検討するのは危険
  • 平均金価格が1400ドルになった2013年第二四半期に中国とインドで400トンの追加需要
  • 1,000ドルを割り込むと現物需要がさらに増すと予想される

基本シナリオ

  • 2015年の平均金価格は1,170ドル/トロイオンス。
  • 2016年はアジア市場の買いで、金相場が緩やかに上昇し、1250ドルと予想。

供給面では、2016年までは鉱山生産量が減少、中古金スクラップの供給は横ばい。

需要面では、宝飾品消費量が緩やかに増加。金地金や金貨の形で、年間1,000トン強が地上在庫として積みあがる。

米国以外の量的緩和策、中東・アジアなどの地政学リスクや節税などで買い支えられて、1000ドルを割り込むような安値は考えにくい。

金相場の上昇要因

米国経済の好調さから、金相場の上昇要因は小さい。金価格が1500ドルを上回る可能性は小さい。もし、金相場が大きく上昇するとしたならば、大規模な地域紛争、根強いデフレ対策への対処となる金融政策、逆にインフレ圧力の上昇が可能性として考えられる。