主要生産国がロシアと南アフリカに偏っている(両国で約9割)白金価格は、南アフリカの鉱山ストが2014年6月に終了し、生産量がスト以前の水準に回復したことで下落トレンドを描いています。
スト終了し南アフリカの白金生産は回復
日経新聞によると、南アの資源会社「インパラ・プラチナム」は、11月になれば生産はほぼ完全に回復すると明言。貴金属商の徳力本店の新井昌広取締役は、12月も予定通りに白金を調達できる見通しと話す。
白金生産会社「ロンミン」は、南ア従業員の約21%に相当する5700人をリストラする計画を明らかに。計画では11の鉱山シャフトのうち半分を閉鎖予定。賃上げストが会社の業績を圧迫しているとのこと。
もう一つの生産国、ロシアは、ウクライナ情勢の緊迫化で、供給懸念が出ていたものの9月の停戦合意により、白金の供給不安は薄くなった。まだウクライナ情勢は終わったとはいえず、ロシア側は天然ガス・石油・白金などを外交カードとして利用する可能性は残っている。
- 白金の変動要因:南アフリカとロシアの影響は大
- プラチナ2013によるジョンソン・マッセイの予想
●東京白金価格の週足チャート:EVOCX(2014年9月29日)
先物で1gあたり4615円前後で推移
欧州の景気悪化による白金需要の交代
欧州は、ウクライナ情勢の緊迫化・デフレ進行などにより景気が落ち込んでいる。白金は欧州でシェアの大きいディーゼル車の排気ガス触媒としての需要が大きい。ドイツ・フランス・中国などの自動車販売は伸びておらず、需要減退が指摘されている。
また、中国は習近平政権の下で「2014年キツネ狩り」とも言われる汚職取締・不動産市況の悪化で、金・白金の宝飾品需要が伸び悩む環境。
米国の量的緩和終了
米国では、2014年10月に量的緩和による債券購入が終わりを迎えることから金価格は下落トレンドを迎えている。白金もその流れに乗り下落。
白金は、需要減退が金以上に大きいことから、金価格との価格差は縮まる傾向。
●NY金と白金の週足チャート:EVOCX(2014年9月26日)
ローソク足=金価格(1214.1ドル)、ラインチャート=白金価格(1303.5ドル)。一時広がっていたのが縮小傾向。
中長期の白金相場としては、田中貴金属工業の原田和佳子執行役員が、「中国の需要は長い目で見れば伸びしろが大きい」と語っているように、上昇を予想する意見も多い。
パラジウム価格もウクライナ停戦合意で下落
同じく白金族の貴金属で、ロシアに生産が偏っているパラジウム価格もウクライナの停戦合意で下落している。
ただし、こちらは、ウクライナ情勢以前にロシアからの生産自体が減少している上に、在庫として抱えていた分をほとんど放出してしまっていることから、地政学リスクが高まればすぐに上昇する可能性を残したまま。英国のジョンソン・マッセイ社は、数年前に白金とパラジウムの価格は同等になるとのレポートを出している程。
2013年にTOCOMのパラジウム先物相場は、年初の1g=1,964円から年末の2,400円まで、400円強の値上がりを見せた。(上昇率22%)
●NYパラジウム価格週足チャート:EVOCX(2014年9月26日)
1トロイオンス=900ドルを越えるも800ドル割れまで下落。