シリア内戦は、アサド政権が化学兵器を使用したと、米国のケリー国務長官が明らかにし、米国が何らかの行動を取ることを示唆しました。
このニュースにより、地政学リスクの高まりで株価は下落・金価格は上昇を見せています。
2013年8月27日、国連査察団が化学兵器について調査中。
米国と同盟国は、数日以内に政府軍に攻撃を加える可能性を示唆
シリア内戦の状況
2011年1月から続いている政府軍と反政府軍の戦い。
シリアのアサド政権に対しての反政府勢力との戦いを指す。シリア騒乱や危機と表現されることもあるが、明らかに内戦状態です。
トルコの南・イラクの西で、さらに西側にはイスラエルがある枢要の地。首都のダマスカスは紀元前10世紀には、アラム人の王国があり、世界で最も古い都市とも呼ばれる。
●NY金価格チャート:6/28に1200ドルを割り込んで以降に反発。エジプト・シリア問題、価格低下による金需要の高まり。
8/22:1370.8ドル
チャート上に一目均衡表を描いています。エースCXオンライン
チュニジアのジャスミン革命の影響で起きたアラブの春の一環。
金価格は、エジプトのクーデター以降、高まりを見せて上昇しています。
さらに、シリア内戦の影響や欧米の介入度合いでさらに動き出す可能性がありますので、金の投資家は注目が必要なニュースです。
アサド政権の概要と宗教
1963年のクーデーター以降、バアス党(アラブ社会主義復興党)が国政を支配し、ハーフィズ・アル=アサド大統領の後を継いだ息子のバッシャール・ハーフィズ・アル=アサド氏が大統領として政治をつかさどっている。
アサド大統領はイスラム教シーア派系の少数派(人口の約1割)アラウィ派出身。軍や治安部隊幹部も同派出身者が多いと言われる。
国内で多数を占めるスンニ派が弾圧の対象となるなど、宗派間紛争は常に懸念されているが、対立は深刻でないとの意見も多い。
内戦突入直後は、アサド政権が倒れるのは時間の問題との見方が強かったが2013年8月現在も政権を維持しているところを見るとシリア国内でアサド政権は一定の支持を受けていると言える。
NATOが調査した結果では、70%のシリア人がアサド大統領を支持、20%が中立、10%が反政府勢力支持とのこと。=メディアでの報道はほとんどなく真偽不明。
シリア国内では、反政府勢力は、外国の勢力が支援・援助を与えており、外国の組織自身が入り込んでいる。そして、アサド以上に残酷でシリアのためにならないとの意見。
反政府勢力
反体制派はトルコなどを拠点とする「シリア国民会議(SNC)」が代表的。
その他にも「自由シリア軍(FSA)」そして、アルカイダやヒズボラなども参加。
シリアの反体制派はバラバラで統一した見解・組織や国の将来性は見いだせていない。
2011年9月には「国民評議会」、2012年末には「国民連立」が結成されたが、いずれも団結に失敗。
武装反体制派は、「自由シリア軍」が、混乱の中で統制を失い、2012年夏過ぎにはかなり広範囲で支持を失った。そして、これに代わり士気・規律そして装備が比較的良好なイスラム過激派が戦闘の主役となるもその過激さ・残酷さゆえか、シリア人民や支援国の支持を得られていない
シリア内戦を巡る各国の思惑
政権支持派
●アサド政権はイラン、ロシア、中国などが支援している。
イランは最大の直接的支援者で、ロシアは以前からの強い結びつきで武器輸出を行う。ロシア・中国は中東の権益を米欧の独占にはしたくない。
石油・ガスなどのエネルギーは、イランとイラクが支援。
●2012年2月4日:国連安全保障理事会は4日、シリアのアサド大統領に退陣を求めるアラブ連盟の収拾案を「全面的に支持する」とした決議案を採択したが、常任理事国のロシアと中国が拒否権を行使し否決された。
ロシアと中国は昨年10月のシリア非難決議案でも拒否権を行使していた。
2013年8月26日:ロシアのセルゲイ・ラヴロフ外相は、イラクやリビアを例に挙げ、新たな軍事介入は中東および北アフリカの地域全体にとってかなり危険な結果をもたらすと指摘した。
●レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラもシリア政権を支援。米国などがシリアのアサド政権転覆を図った場合、これを阻止するため介入するとヒズボラ最高指導者のナスララ師が言明。
政権不支持派
シリアはイスラエルと準戦争状態を継続中
アメリカは、中東の原油を米国の支配下におくためとイスラエルの安全確保のためアサド政権を不支持。
米欧は、アラブの春以降、基本的に民主主義政権を支援しているが、イスラム色の強い政権に対してはエジプトのように難色を示す傾向がある。
そのため、アサド政権を崩壊させた場合に、イラク・エジプトのように混乱もしくはイスラム宗教政権にはしたくない。
イラクのフセイン政権が倒れた時の金価格
大量破壊兵器が存在するとして米国のブッシュ政権が侵攻したイラク戦争。
9.11そしてテロとの戦いが金価格高騰の大きな転換点でした。
2003年3月時点も1トロイオンス320~350ドル程だった金価格はその後も右肩上がりのトレンドで上昇する。
今後のシナリオは、エジプト情勢と同じく、内戦が集結するのか中東全域に拡大するかどうかです。
また、リスク回避が強まり資産を現金に換える勢いが加速すると一時的に金も売られる可能性が出てきます。
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シリアへの軍事行動の可能性から、円高・株安・債券高、そして原油・金高の流れになっていますが、オイルマネーが縮小する懸念(ロイター)や、軍事行動が短期に終わった場合の反発の可能性など予測が錯綜しています。
ただし、これからの報道について、日本のマスコミは欧米メディアのニュースをそのまま流してしまいます。
ユーゴスラビア内戦時やイラク戦争の時も同じでしたが、どちらか一方だけが100%悪いということはありませんので、よく内容を吟味することが重要です。
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