商品先物取引(CX)は、名前こそ知られていますが具体的な仕組みをご存じない方も多いと思います。そこでそのしくみをご紹介いたします。
商品先物取引の規制法
商品先物取引法により適正な運用と投資家保護が行われています。
●規制法:商品先物取引法
●規制当局:経済産業省・農林水産省
●取引所:東京工業品取引所(TOCOM)、東京穀物商品取引所(TGE)、関西商品取引所(KEX)
●清算機構:日本商品清算機構(JCCH)
●協会:日本商品先物取引協会
●取扱い会社:商品先物取引会社
商品先物取引の目的や役割
金を代表とする商品先物の目的
●価格変動リスクのヘッジ:価格が変動すると経営や生産が安定しない商品に対して先物市場でリスクヘッジができる。
●価格形成と発信:取引所で不特定多数の参加者により公正される透明性の高い価格形成とその価格の公表により価格指標の役割を果たす。
●商品の受渡:実際に商品先物市場で商品を受け取ることができる機能です。
●資産運用(投資):投資家の参加により市場に厚みと流動性をもたらす。投資家は商品先物市場で売買やリスクヘッジを行い資産運用手段として利用できる。
資産運用としての取引
●株価や債券と値動きが異なることで分散投資を行うことができる。オルタナティブ投資と呼ばれることもある。
●取り扱う商品が金や原油といった物なことから、「物価」と関係が深く、インフレ対策として利用しやすい。
●少額の証拠金を預けることで大きな取引ができるレバレッジ効果で資金効率の良い取引ができる。
●人気の高い「金(ゴールド)」の取引を低コストで行うことができる。
投資家保護
●取引証拠金の分離保管:商品先物取引業者は、顧客から預かった証拠金について、JCCH(日本商品清算機構)に預けることで会社の資産と分別して保管することが義務付けられています。
もし、商品先物取引業者が破綻しても、顧客の証拠金はJCCHにおいて保管されているため、JCCHに対して証拠金の返還を請求することとなります。
●ペイオフ制度:証拠金制度や分離保管制度による顧客資産は保全されています。ただし、それでも保全が十分でない場合に備えて、委託者保護基金が委託者(顧客)1人当り1,000万円を限度として、機関投資家等を除く一般委託者に弁済を行う制度です。
●不招請勧誘や再勧誘の禁止:かつて一部の悪質な業者が強引な営業を行い評判を下げていました。
商品先物取引と株式の違い:限月
商品先物取引 | 現物株式取引 | |
取引の期限 | あり(限月取引) | なし |
決済方法 | 差金決済と受渡決済の二つ。差金決済がほとんど | 総約定代金での決済 |
レバレッジと証拠金 | 証拠金制度により、少額の資金で大きな取引が可能(レバレッジ効果) | 総約定代金が必要 |
●限月:商品先物取引は、取引に期限があり限月と呼びます。3月に期限が終了となる場合「3月限」と呼び、直近で期限が終了するものを「当限(期近)」。期限が先にあるものを「期先」と呼びます。
3月限を買った場合、決済も3月限で行います。
レバレッジ効果と証拠金
少額の証拠金を預けることで、多額の取引を行えるメリットがあります。金取引の場合、1,000g=1kgを9万円の証拠金で取引できるため、総取引金額490万円に対してのレバレッジは約54倍です。
※証拠金の額や価格は金相場の状況により変化します。
銘柄 | 倍率 | 証拠金 | 価格(1g) | 総取引額 | レバレッジ |
金 | 1,000倍 | 9万円 | 4,900円 | 490万円 | 54.4倍 |
白金 | 500倍 | 5.4万円 | 4,950円 | 247.5万円 | 45.8倍 |
商品先物で発生する損益は、総取引額に対して生じますので、証拠金ベースで損益を考えるとわずかな値動きが大きな損益をもたらします。金価格が1円動くと千円の損益が生じ100円動くと10万円の損益になります。
そのため、自身の資金の大きさにあわせたリスク管理が大切です。
差金決済と受渡決済
●差金決済:限月の期限(納会日)が来る前に、当初の取引の反対売買(買いまたは売り)を行い、生じた損益は差金で決済を行います。
●受渡決済:限月の期限(納会日)までに差金決済を行わなかった取引は、現物の受渡しにより決済します。商品の引き渡しや商品の受け取りを行いますので金先物の場合、金の現物を受け取るか引き渡しを行います。