危機が起きると買われる金は、災害・紛争・戦争など問題が起きれば起きる程、金価格が上昇します。
前から、「有事の金」と言われていますのでご存知の方がほとんどだと思います。何しろ、国家が発行する通貨は、戦争・財政破綻などで価値がなくなることがありますからね。
通貨の価値を支えているのは、国の信用ですから、戦争で敗北でもしようものなら紙切れになったり、ハイパーインフレ・通貨安で価値を失ってしまいます。そのため、世界共通通貨である金に人気が集まるのです。
現在(2013年)、シリア内戦とエジプトのクーデターにより、この言葉をニュースで聞くことが増えました。
地政学リスクとは
地政学リスクとは元々、地理的・地域的な環境が国家に与える影響を調べる学問の一つでした。海洋国家と大陸国家の差や交通の要路などの国がどのような共通点を持つのか。
シーパワーやランドパワー・文明間の衝突など多くの要素が存在。
近年、市場において、ある特定の地域や国が政治的・軍事的に混乱することで、その地域および世界経済に大きな影響を与えるリスクを地政学リスクといいます。特に戦争や内乱・テロリズムなど軍事的問題に発展しそうな案件に対して「地政学リスクが高まった」と言います。
大国や重要な資源を持つ国で軍事的衝突を起きるとその地域の経済は破壊され甚大な被害が生じます。 しかも開始・終結は市場に大きな影響を与えるものの情報の混乱により噂や誤った情報で市場が左右されますので、市場は重視するわけです。
もっとも、近年は軍事より経済的な面で問題が起きることも多く「サブプライム・リーマンショック・ソブリン危機」などの時にも使われます。
地政学リスクの例
・2013年春の北朝鮮が日本にミサイル発射警戒:最悪、核ミサイルや原発への撃ち込みが危惧されました。もし、最悪の事態が起きると日本そして世界の経済は壊滅的打撃を受けます。
・2013年夏のエジプトクーデーターとシリア内戦:イランやイスラエルを巻き込んでの中東戦争、米ロの代理戦争、イスラム原理主義勢力の伸長など深い問題に発展する可能性。
最悪が起きた時に備えて投資家は、金投資を開始したり安全そうな通貨に資産を移したります。そのため、地政学リスクの高まりは、金や米ドル・スイスフラン・日本円など避難通貨の価格上昇に繋がります。
有事のドル買いとも言われるゆえんです。ただし、通貨の場合、避難通貨が当該国のことがあり乱高下も。
国家破綻例
1.第一次世界大戦に敗れたドイツは巨額ば賠償金を要求され、紙幣の大増刷を行った結果としてハイパーインフレを起こすこととなった。
2.ロシア通貨危機。冷戦が終了しソ連が崩壊しロシアになった後も政治・経済の混乱はおさまらず、原油価格の下落などを原因とした1998年のロシア財政・通貨危機が起きた。ルーブルの大幅下落や国債のデフォルトも
3.第二次大戦に敗れた日本では、戦費として調達した戦時公債が約500兆円にも上り、とても返済できる目途は立たなかった。そこで、政府は預金封鎖を実行し国債は紙切れ、旧円使用や引き出し制限を行い財産税を徴収するなどでしのぎました。
3つの国家破綻の例を戦争や経済関係であげましたが、どれもとんでもなく国民に迷惑をかけています。政府が発行した紙幣や債券を大事に持っていたら紙切れになったのですから。
これが、いまだに、金(Gold)が価値のある理由です。
有事の金復活
実は、経済的に金が輝きを失った時代があります。
ソ連が崩壊し冷戦が終結したことで、小さな地域紛争はあっても大きな戦争で主要先進国の通貨や証券が紙切れになることはありえないと思われていました。
そうなると、金利を生まない金を持っていてもお金は一円も増えません!ならば値上がりが期待できる株や利子を貰える債券や預金が有利と皆が考えて金価格は下落を続けました。
ところが、9.11テロが起こり、世界平和が幻想だったことが分かるとともに、21世紀の金価格は上昇しはじめました。
以降、有事の金は復活し、紛争や戦争・経済危機が起きると金が買われます。
ただし、噂で買って事実で売るに注意しながら金投資を行ってください。地政学リスクが高まると金価格は上昇しやすいのが基本的なセオリー。
戦争が始まる前は買い・実際にはじまると売り=材料織り込み済みとして初心者の方は金相場というものが分からなくなってしまうことがあります。