シリアを巡る米露の対立は、本当の衝突に発展するのでしょうか?シリアの化学兵器使用疑惑から米露対立が激化したように見えますし、トランプ大統領も冷戦時代以来だとツィート。
しかし、有事で値上りしやすい金価格は、シリア情勢の悪化に伴い少し上昇するも、1340ドル前後と落ち着いた動き。
もし、シリアへのミサイル攻撃があれば、少々、上昇するかもしれません。ただし、この問題で大幅な上昇までは至らないのではと思います。
米露対立が決定的になれば、金価格は、もっと上昇するでしょう。
2018年4月13日
シリアへの攻撃だけだったら、一時的なリスクで済みます。本当に恐いのは、米国とロシアの決定的な対立。
これって本当に起きるのでしょうか
シリアでは、誰が化学兵器を使ったのか?
トランプ大統領は、ツイッターで過激な発言を連発。
24~48時間以内に重大な決断をする。ロシアにミサイルが飛んでいく・・・この時はかなり危ないかと。マティス米国防長官も、大統領が指示すれば、米軍はシリアで行動する準備ができていると発言。
しかし、トランプ大統領は、シリアにミサイルを撃つことなく、英仏及び国連での話し合い及び調査を行う方向に進んでいるようです。
●英国は、閣議でアサド政権が化学兵器を使用した可能性は高く、同盟国と共に対応することで合意。ただし、現時点での武力行使は決まっていないとしています。
●フランスは、マクロン大統領が、アサド政権が化学兵器を使用した証拠を握っていると発言。
●マティス国防長官は、シリアでの化学兵器使用は確実と発言。
これらの発言から、シリアで化学兵器が使用されたことまでは確実。しかし、化学兵器を使用したのがアサド政権か反体制派かは不明。マクロン大統領は、証拠があると発言したようですが、どこまで確実な証拠でしょうか。ホワイトヘルメットの情報だったら、他の証拠を探せとマクロン大統領にアドバイスしたいところ。
ミステリー小説でも犯罪は、動機を疑えと言うように、アサド政権側に化学兵器を使う動機は少ないはず。東グータ地域制圧に化学兵器は不要でした。必要なのは、ロシアをはじめとした各国のバックアップと反体制側への締め付け。化学兵器を使用することは、戦術的に何の意味もなく、戦略的に不利になるだけ。
米露冷戦の深刻化は本当?
それでは、シリアを巡り、米露は決定的な対立を起こすのでしょうか?そうなると有事の金買いで金相場は吹き上がる可能性あり。
トランプ大統領のツィートでは、米国とロシアの関係は、冷戦時代を含めて、かつてない程悪化しているとも話しています。
- 軍拡競争を止めよう
- ロシア経済には手助けが必要
- ロシアとイランが獣のアサドを支援した責任がある
そして、ロシア側でもプーチン大統領とメドベージェフ首相は、以前から米露関係の悪化について懸念を表明。
その中で、2017年11月30日のブルームバーグ記事で気になるところが。
米ロ関係の雰囲気は「自らが記憶する限り最悪」で、冷戦期のブレジネフ時代に逆戻りしていると発言。7月にマニラで会談した際にはトランプ大統領から「完全な関係修復への前向きな意思」が感じられたものの、ロシアを敵視する既存の米政治勢力に絡め取られていると語った。ブルームバーグ
メドベージェフ首相の発言の中で、非常に重要。【トランプ大統領からは、前向きな意志が感じられるもののロシアを敵視する既存の米政治勢力に絡め取られている】
2018年4月11日に、トランプ大統領のツィートも重要。ロシアへの憎しみは、民主党支持者あるいはオバマ元大統領のために働いた人々と腐敗したロシアの調査によって引き起こされているとしています。これ、ロシアゲート疑惑やリベラル派によるロシア及びプーチン大統領の長期政権批判のことを指しているはず。
この内容、メドベージェフ首相の発言と一致。
以前から、プーチン大統領は、アサド政権は化学兵器を使用していないと明言しており、国連調査団派遣への安保理決議も拒否。ちなみに、中国は棄権しており、ロシアと中国の足並みはそろっている感あり。
こうなると、思い出すのは、イラク戦争での大量破壊兵器。
コリン・パウエル国務長官は、イラクでの大量破壊兵器の証拠をCIA及び英国の諜報機関から示されて、国連安保理に報告しイラク攻撃の大義名分を得ることになりました。その後、生涯最大の汚点とパウエル国務長官が述べたように、大量破壊兵器は見つからず。イラク武装解除問題
反ロシア・反アサドの信用失墜が目的?
アサド政権が化学兵器を使用したと主張する勢力=反ロシア勢力の信用を失墜させる目的もあるのではと考えられます。シリア攻撃を主張する勢力には、純粋にアサド政権が化学兵器を使用して、無辜の住民を虐殺していると考えている人と反アサド政権・反ロシアの人達がいます。シリア攻撃と拳を振り上げておいて、証拠が嘘だった・確かではないという結果に終われば、反アサド・反ロシア側勢力はその諜報能力・信憑性を失います。
2017年4月6日に、米国がシリアをミサイル攻撃した時も化学兵器使用疑惑でした。
トランプ政権は、これまでアサド政権については関与しない方針だった。ティラーソン国務長官は先月末、シリアの政権は「シリア国民が決める」ことだと述べていた。しかし今週のアサド政権の空爆で化学兵器が使用された疑惑が持ち上がったことから、トランプ政権幹部は一気に強硬姿勢へと傾いたようだ。ニューズウィーク
結局、この時も化学兵器使用について、うやむやのまま終了。ロシアと米国は、関係悪化するも決定的な対立に至らず。
そして、実際のところは、アサド政権がロシア&イランのバックアップでIS及び反体制派を駆逐しつつあります。トランプ大統領の公約だったIS退治は順調に進んでいます。
ロシア大統領府のペスコフ報道官は、米露のホットライン使用を明かして、軍事的な衝突など決定的な事態に至らないように話し合っていることを明かしています。
米露対立ムードは、高まっているものの、米国のトランプ政権及びその側近は、反ロシアで決定的な対立を起こす気はないと予想しますが、対シリア攻撃どうなるでしょうか?
シリアが化学兵器を使ったか否かで、米露が対立・・・問題として小さい気がいたします。ケネディ政権のキューバ危機とはちょっと違うかなと。
それを読み取ってか、シリア攻撃の可能性が高くなっても金価格は落ち着いており、有事の金買いは生じていません。
4月14日、米英仏は、共同でシリアの化学兵器関連施設をミサイル攻撃。ダマスカスとホムスの研究施設と軍事施設への攻撃だった様子。
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