ECBは、2019年9月12日の理事会で、追加金融緩和策を導入。利下げや量的緩和の再開を行うことになりました。これによって、金価格も影響を受けますので、その内容をまとめておきます。
ECBが量的緩和の再開を決定:2019年9月の理事会
欧州経済の悪化や低迷するインフレ率から脱するために、ECBは、マイナス金利の深堀りなどを開始
- マイナス金利を-0.4から-0.5%に引き下げ
- 11月から月額200億ユーロの債券買い入れを開始
- 買い入れに期限はなし:終わりが見えない
- 買い入れ対象の資産を増加
- 融資条件を緩和
マイナス金利の影響を考えて、中銀預金金利を2段階の階層構造に
ECBはこれに対処するため、中銀預金金利を2段階の階層構造とした。所要準備と、所要準備の6倍の超過準備については、支払いを求められることはない。これを超える準備については、マイナス金利による手数料を支払う必要がある。ABNアムロの分析では、超過準備の預け入れコストはこれで、約56億ユーロにとどまるとみられている。ウォールストリート・ジャーナル
ドラギ総裁の退任が近づいている今、後任のことを考えると極端な緩和策は取れないでしょう。為替レートは、量的緩和の再開で、ユーロには下落圧力がかかっています。逆に、米ドルは上昇圧力。
●金価格とユーロ/ドルの日足チャート GMOクリック証券 2019年9月18日
ユーロ安ドル高で、金価格は下落圧力
ECBの緩和再開は、ユーロ安に動きやすい政策。ユーロ安ということは、米ドルや日本円が高くなるということ。ドル高になれば、ドル建ての金価格は下落に動きやすくなります。
実際のところは、ECBの量的緩和に関するニュースが噂として流れたあたりから、米ドル高ユーロ安そして、金価格は、1500ドルあたりでの頭打ちになっています。
また、ドル高金安がセオリーとはいえ、ユーロ安ゴールド高になる部分もあります。そのため、大幅な金安には動きにくいとおもいます。
インフレの勢いが強まらない理由の一つは、長期にわたる緩和が必ずしも自国通貨安につながらないためかもしれない。ユーロはマイナス金利導入後に対ドルで下落し、QE開始観測の中で値下がりが続いたものの、15年1月にQEが発表されると間もなく底を打った。円もマイナス金利導入後、一時的に下落したがすぐに反発した。ブルームバーグ
ECBが、いくら緩和をしても相対的に、日本や米国も緩和すれば、単純にユーロ安には動きません。ドイツの経常黒字は、世界最大ですから、ユーロ安誘導は、きついはず。
IFOのエコノミスト、クリスチャン・グリム氏はロイターに対し、今年のドイツの経常黒字は2760億ドルとなる見込みだと述べた。日本と中国の経常黒字はそれぞれ1880億ドル、1820億ドルになるとの見通しを示した。ドイツの2019年経常黒字
◆ECBが金利を引き下げ⇒ユーロ安ドル高⇒米国の貿易赤字に影響⇒トランプ砲による利下げ圧力
ということで、FRBへの利下げ圧力は強い。米国の利下げは金高へと動く流れ。
どうやら世界経済は緩和なしには景気後退に陥ってしまうらしい。投資家はアメリカの量的緩和再開を視野に入れ始めなければならないだろう。ただ、今回のECBの量的緩和は、日本やアメリカの投資家にとってアメリカが量的緩和を再開した時に市場と経済をどれだけ支えられるのかを知るための重要な試金石となる。量的緩和再開について
そして、もし、量的緩和再開しても市場と経済を支える力がなかったら、市場経済を大きくチェンジしなければならないでしょう。それこそ、いつまでも終わりの見えない量的緩和を続けねばならないかも。金相場にお金が流れ込むのもなるほどなと思います。
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