米国の量的緩和策継続とドル安により安全資産としての金の需要が増加するとの見通しが出ています。
FRBが2013年後半にも行おうとしてきた量的緩和縮小は、難しさを増しており、このまま続けていくことになれば金価格の下支え要因。ついに12月17日・18日のFOMCで縮小開始を決定!
米FRBの量的緩和継続の傾向
ロイター通信が10月22日にプライマリーディーラー(政府証券公認ディーラー)を対象に行った調査では、2014年3月以降になるとの回答が大半を占めた。
- 15社中9社がFRBの量的緩和縮小開始は来年3月になるとの見方を示した。
- 2社は1月28─29日の連邦公開市場委員会(FOMC)
- 2社は来年第1・四半期に緩和縮小が発表されると予想
- 1社は1月以降、残る1社は来年6月以降と見通した。
- 資産買い入れの終了時期に関しては、15社中13社が2014年下期と予想した。
- 利上げ時期の予想は15社中13社が2015年、残りの2社は2016年とした。
ここまで、先送りになる理由は、米議会の混乱です。政府機関の閉鎖そして、債務上限引き上げに対する共和党と民主党の対立は世界経済を奈落に突き落としかねない状態を引き起こしました。
債務上限引き上げ期限前に合意こそ行いましたが内容は問題先送りで、暫定予算の期限は来年1月15日に切れてしまいます。債務上限についても来年2月7日と2014年早々に同じ事態が起こりかねません。
テーパリングとも呼ぶ緩和縮小開始が延期されればされる程、金価格の上昇要因。そして開始が近づいたり雇用統計の改善が進めば下落要因!
ただ、米国の債務は大きいものの政府の財政収支推移は改善傾向。
日本の債務も心配
日米の政府債務残高(対GDP比)の推移
FRBの二つの使命
米議会から課されている使命は、「インフレの安定」「雇用の最大化」の二つ。
次期FRB議長に指名されたイエレン氏は、以前から雇用=失業率の引き下げを優先する発言を繰り返していることからハト派色が強いと見られている。現議長であるバーナンキ氏よりも失業率を優先している傾向。
Federal Reserve News: Who Is Janet Yellen:動画
緩和継続は金価格上昇要因
失業率引き下げを重視し緩和策を続けるとインフレ率の上昇に繋がりやすい⇒金価格が上昇しやすくなる。
欧州三菱商事(ロンドン)の貴金属ストラテジスト、ジョナサン・バトラー氏は、ブルームバーグのインタビューで貴金属相場の強気を予想
「2週間に及んだ米政府機関の一部閉鎖の影響と非農業部門雇用者数の伸びが低調だったことを考えると、FRB(米連邦準備制度理事会)にとってこの段階で緩和策縮小を発表するには勇気が要るのは明白だ」
「緩和策縮小の時期が先送りされる可能性があることに加え、ドル相場が引き続き軟調であるため貴金属相場にはさらに勢いが付くだろう」と述べた。
●NY金の日足チャート:10月24日の期近:1350.3ドル
エースCXオンラインのチャートを利用しています。クリックすると拡大
●東京金の日足チャート:10月25日先限は4195円
両者とも上昇傾向にあるがボリンジャーバンドの上限に達している。反落の可能性とバンドの上部ラインに沿った緩やかな上昇のどちらに動くか
白金価格のチャートと動向
NY白金の週足チャート:10月24日の期近:1456.2ドル
●東京白金の日足チャート:10月25日先限は4541円
白金は、金よりも景気動向に左右されます。米債務問題で政府機関閉鎖による景気悪化が懸念されたため、白金の生産コストといわれる1トロイオンス1400ドルの水準を下回った。
その後、米国議会が合意したことで回復基調にある。
今後の動向としては、米国や欧州の景気回復に伴い自動車販売が増えていけば、触媒用としての白金需要が増えていくことが予想される。
一方、供給面では、南アフリカの鉱山ストや大幅な賃上げ問題で生産コストが上昇する可能性が高いことから上昇する可能性が高い。もちろん、米債務問題や中国や欧州景気のダウンだの不透明感が高まると下落リスクが生じる。